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テツヤ「はい! ママ」

テツヤが、薄汚れたウサギのぬいぐるみを差し出した。

サオリ「こ、これはもしかして!」

そのぬいぐるみは、失くしたはずの亡き母の形見でした。

私が子供の時の誕生日プレゼントに、母が作ってくれた手作りのぬいぐるみです…

でもずっと前に失くしたはずなのに、なぜそれをテツヤが持っているのでしょうか…

テツヤ「ボクはあれから練習をして、最近やっと物質とのエネルギー交流が少しだけ出来るようになったんだ。そしたら、ウサギさんが話しかけてきた。ママの所に戻りたいって…」

サオリ「物質とのエネルギー交流???」

そういえば… この子は1人にしておくと、いつも何かのトレーニングを黙々としている…

テツヤ「そのウサギさんはね… ママのことが大好きなんだよ」
 
ひとりっ子の私は、淋しさを埋めるためにいつもこのぬいぐるみを手放さなかった。

だが、大きくなるにつれ勉強や部活などで忙しくなり、いつしかぬいぐるみの事も忘れてしまっていた…

その後、母が亡くなってから形見となったそのぬいぐるみを失くしてしまったことをとても後悔していた…

なぜ、それをテツヤが持っているのでしょうか…

テツヤ「これで、あの時の約束は果たしたよ」

サオリ「あの時の約束???」

テツヤ「ママ、忘れちゃったの? 5年前の約束だよ」

サオリ「5年前って… あなたはまだ生まれていないでしょ」

テツヤ「(๑•᎑•๑)ウン そうだよ。でも生まれる前に、ママに会いに来た時に交した約束だよ」

サオリ「生まれる前に会いに来た???」

今日のテツヤは、いつもにも増してブッ飛んでいる…

テツヤ「子供はね、生まれる前に自分のママを選ぶために一度やって来るんだよ。意識体のままでね」

サオリ「そ、そうなの?」

テツヤ「(๑•᎑•๑)ウン そしてお空の上からママを選ぶんだよ。どのママに産んでもらおうかなって」

サオリ「そ、そうなんだ…」

テツヤ「決めたら、そのママにお願いに行くんだよ。産んで下さいってね。そして意識の深奥で合意があれば、そのママから産まれてくることが出来るんだ」

テツヤの言っていることは、本当なのでしょうか…

…………………………

そういえば…

5年くらい前に不思議な少年と出会ったことがあった…

私のことをママと呼ぶ謎の少年…

5年前のある日、私がバスの停留所で待っていると見知らぬ男の子が話しかけてきたのです。

男の子「ママ! そのバスに乗っちゃダメ!」

サオリ「え? ママ?」

男の子「そのバスは危ない!!!」

サオリ「あなた、どこの子? 迷子になっちゃったの?」

男の子「ママ! とにかく、そのバスに乗ってはいけない」

…………………………

その後、そのバスは死傷者が出るほどの大事故を起こしていた。

もしも、このバスに乗っていたら私も無事には済まなかっただろう…

…………………………

そのバスの一件の後にも、その不思議な男の子は再び現れたのです。

男の子「ママ、ボクを産むことに合意してくれてありがとう!」

サオリ「えっ??? 何の話し???」

男の子「産んでくれたら、その時にママの大切な物をプレゼントするね」

サオリ「???」

その時は、何のことかサッパリ分かりませんでした…

その後、主人と出会いトントン拍子に縁談がまとまり、2年前にテツヤが生まれたのでした。

…………………………

サオリ「もしかして… あの時の不思議な男の子はテツヤだったの?」

テツヤ「(๑•᎑•๑)ウン ボクがお空の上からママを選んだ時に、ママのエネルギー残量は切れかけていた… だから、ママにピンチを知らせるためにバスに乗るのを止めたんだよ」

サオリ「………」

テツヤ「そして、産んでくれたことへのお礼が、そのウサギさん(^^)」




この子には、驚かされてばかりです…

どうやら、この世には私たちの知らないことがたくさんあるようです…

テツヤは、その事を教えるために生まれて来たのでしょうか…

サオリ「ところで、テツヤ。なぜママを選んでくれたの?」

テツヤ「そんな事は決まってるじゃないか。ママのことが大好きだからだよ❤」




つづく…