こんにちは。
大分前回の日記から日をあけてしまいましたね(苦笑)
いつのまにか年まで越してしまていました。
前回の雨宿りのお話の続きは…、そうですね。
機会があったら、またお話したいと思います。
* * * * * *
冬の雨が降り注ぐ中、私は少しだけ買い物帰りに寄り道する。
そこは、三蔵様と初めて出会った公園。
……私にとっては思い出の場所。
傘をさしながら、私は思い出を辿るようにゆっくりと歩く。
…こんなふうに思い出を胸に刻むのは、忘れないため。
残された時間がどれくらいかは分からないけれど、それでも神様から貰ったガラスの瓶には、コンペイトウがかなり溜まっていました。
(あれは…)
いつものように東屋まで来ると、そこには以前と同じように、三蔵様が空を見上げて煙草をふかしていました。
「…こんにちは」
「…ああ…」
三蔵様は相変わらずぶっきらぼうでしたが、私はそのまま三蔵様の隣に立ち、静かに空を見上げます。
「…今日の雨音は、何だかやさしいです」
ぽつりと言うと、三蔵様はそうか、とだけ短く答えました。
きっと雨音がやさしく感じるのは、隣に三蔵様がいるから。
「…以前にも、こんな風に三蔵様と雨宿りしたことがありましたね」
「…ああ。おまえと出会ってさほど経ってはいなかった頃だな」
三蔵様の言葉にも、どことなく懐かしく穏やかな響きが込められているのを感じて、私は嬉しい気分になりました。
「あの時、三蔵様は雨に良いも悪いもないって、教えてくれました」
「…そんなことも言ったか…。おまえは随分と物覚えが良いんだな」
煙草の煙をふうと吐き出しながら、三蔵様は静かに話の先を促します。
「…私にとっては、凄く印象的な言葉でしたから。あの時、三蔵様の瞳には、この世界はどう見えているんだろうって思いました」
私は空を見上げ、答えた。
「…さあな。……おまえには、この世界はどう見える?」
相変わらず質問で返されてしまい、どことなく懐かしいような、それでいてやっぱり教えてはくれないんだなあ…、と少しだけ寂しいような、微かな苦笑が私から漏れる。
それでもそんなところもやはり三蔵様らしいと思う私がいて…。
「……そうですね。私にとって、世界は綺麗で、悲しいものです」
私はそこまで告げると、いったん言葉を切りました。
確かに、以前の私なら、世界は悲しく、残酷で無邪気な世界だと、そう答えたでしょう。それが、記憶を失う以前の、私を取り巻く世界だったから。
三蔵様は、私の言葉をただ黙って聞いていました。慰めるわけでも、励ますわけでもなく、ただ静かに。
「でも……」
しばらくの沈黙の後、私は再び言葉を紡ぎ始めました。
「今は少しだけ、温かく、やさしい場所でもあると…そう思っています」
三蔵さまは少しだけ意外そうに、わずかに目を見開いて私をみつめました。そしてやがてポツリと静かに告げました。
「……なら、そう思えるおまえでいるんだな」
三蔵さまの言葉は相変わらず素っ気ないけれど、それでも言外に三蔵さまの声なき声が聴こえるような気がして、私ははい、と返事をしました。
世界を温かく、やさしいと感じられる私は、きっと、以前の私よりは幸せだから。
そんな私であれと、三蔵さまはそう、言いたかったのだと思います。
* * * * * *
少しずつ私の記憶は蘇えり、いつかこの世界のすべてを忘れても、きっとこの想いだけは忘れない。
忘却は、忘れるだけで無くすことではないのだから・・・。
芹菜
