あるきだす言葉たちから


すぎうら けいすけ 1968年和歌山県生まれ
94年に中上健次主宰「熊野大学俳句部」で俳句に出会い
桂信子主宰「草苑」入会
2001年 現代俳句新人賞   
「草樹」会員


砂の色


秋風が迷う立体駐車場

いちにちのはじめも嘘か初紅葉

秋潮や映画の中の太地町

遠景の霧滞る畳かな

語り継ぐ人を遠目に茸汁

熟睡のひとりは目覚めて柘榴の実

うたたねの頬に檸檬を近づける

明け方の活字の中の鹿の声

猪の腹裂く青空を一度見て

かずかずのもの浮いており秋の水

体育館謎の少女はしんがりに

秋風や靴もいつしか砂の色