あるきだす言葉たち
 
 
 
おづ・やけい  1973年北海道生まれ  南仏在住
 
 
 
 胸にフォークを
 
 
まかなひを分けあふ春や点滴庵
 
水ぬるむ日のあをいろを鳥に巻く
 
薄味のカタストロフを蝶に添へ
 
ごちさうの空に文庫をかざしけり
 
おほかたは気体のやうな梅の花
 
ふるふるとフラスコ揺する牡丹雪
 
のつけから渦巻くツバメ探偵社
 
そらみみの揉みあふ舌を見てゐたる
 
霾や胸にフォークをしまふとき          霾/つちふる
 
春眠に落ちてゆく手の砂時計
 
くすぐると濃くなる囀も髯も            囀/さへづり   髯/ひげ
 
書かれつつある朧より脱け出しぬ