あるきだす言葉たち  から
 
 
おの・あらた  1993年生まれ
2010年石田波郷新人賞受賞  銀化/会員  玉藻・群青/同人
 
 
 
 
 
雨兆す
 
 
スプーンの裏より落つる葛湯かな
 
海鼠切る音に歯応えありにけり
 
冬深し蒲団の上に菓子零す
 
日向ぼこ文学館の庭広し
 
寒鯉の吐き出せしもの浮びをり
 
山茶花の純白となる開きつつ
 
野の果てに雨の兆せる兎かな
 
電線の丁字に分かれ時雨れけり
 
薄蒼き水湛へをり朴落葉
 
クリスマス人待ち顔の鳩とゐて
 
鯛焼の餡ぼつぼつと見えてをり
 
土深く刺さつてゆきぬ寒の雨