あるきだす言葉たち から
 
 
ひらた りんこ   1966年福岡県生まれ 「百鳥」同人  俳人協会会員
 
 
 
 
木の扉
 
 
秋晴のバイクぎりぎりまで倒す
 
ひと筆は波を表し菊日和
 
花野来て修道院の木の扉
 
秋の蝶低きところにもつれをり
 
晩秋や潮の満ちくる雨上り
 
十二時の長きサイレン冬ざさる
 
近道の男坂ゆく空つ風
 
山宿のいふこときかぬ障子かな
 
ゐろりの火消えて茶碗を洗ふ音
 
丑三つのだんだんぬくき羽根ぶとん
 
台所背にして座り日短
 
昼月の白のさみしき近松忌