第一回五十句競作・佳作第一席
 
 
 
  亡父あるひはあひるの為の頌歌
 
 
 
梅雨明けの彼岸のベルの凄さかな
 
長月の方法と水残りけり
 
睡蓮に音ありあひる快楽す
 
鬼あざみ鬼のみ風に吹かれをり
 
甲に花乙に花びら亡父に飯
 
昼顔を洗ひなほしてをとこ発つ
 
青空に近き酢物をつまむかな
 
出る釘の頭に亡父を養へり
 
十二月あひると愛人疾走す
 
永き日の縄取り紙の上下かな
 
雄鶏の睨みし天に流るるもの
 
春の穴に躓きあひるあひるたり
 
一羽のみ笑ふて大鴉の百一羽
 
犬らしき犬匂日立つ天文台
 
船燃えてあひるぐんぐん秋となる
 
カンナ燃え眼玉の如きもの渇く
 
油蝉飛ぶ三界の軽きこと
 
木に泊まる四人にひとり紅葉す
 
足洗ふ春野に銭を忘れけり
 
戸締まりの亡父の脛より花ふぶく
 
南浦和のダリヤを仮りのあはれとす
 
犬のことを想ふ老人葱畑
 
洗ひつづけぬ九月の紅を死ともいふ
 
曇天に紛れて針を買ひわする
 
花疲れ蝸牛われをなぞるなり         蝸牛/ででむし
 
バラ散りてあひると墨の匂ふかな
 
古りそびれては赤き林に身を刺しぬ
 
幼年の木を焚きつくす木曜日
 
亀転びやすし満月の肩のあたり
 
千年の七日あひるの喪中かな         七日/なのか