あるきだす言葉  から
 
 
きんばら・まさこ   1911年東京生まれ  「街」「らん」所属
句集カルナヴァル
 
 
 
煌々と
 
 
煌々と爪切っており象の爪          煌々/こうこう
 
そのドアではない嵯峨菊の寝所は
 
墜ちてくる秋蝶すばやくラップせよ      墜ちて/おちて
 
酢もずくのような水ぐもが皿の上
 
遠花火父のかたちがうしろより
 
血が軽い赤子と虎の皮に寝て
 
昼月よくらげが溺れている海よ
 
木守柿盗人指紋消してある
 
星踏んだらし土ふまずの青痣         青痣/あおあざ
 
イエズスとユダを沈めて大花野
 
芒野にいて燥のひとといるような
 
チャイム鳴るまで緋烏瓜の揺れは      緋烏瓜/ひからすうり