鳥之道集
元禄7年6月21日 大津木節菴にて
秋ちかき心の寄や四畳半 翁
しどろもどろにふせる撫子の露 木節
月残る夜ぶりの火影打消して 惟然
起ると沢に下るしらさぎ 支考
降りまじる丸雪みぞれの一しきり 節
手のひらふいて糊ざいくする 翁
夕食をくはで隣の膳を待 考
なにの箱ともしれぬ大きさ 然
宿宿で咄のかはる喧嘩沙汰 翁
うぢうぢ蝨のせゝるひとりね 節
佛壇の障子に月のさしかゝり 然
梁から弓のおつる秋風 考
八朔の礼はそこそこ仕廻けり 節
船荷の鯖の時分はづるゝ 翁
西美濃は地卑に水の出る所 考
持寄にする醫者の草菴 然
結かけて細縄たらぬ花の垣 節
足袋ぬいで干す昼のかげろふ 考
未完