あるきだす言葉たち から
1980年神奈川県生まれ 「椋」所属
2015年北斗賞受賞 句集「封緘」
傷
アカシアの花を玻璃戸の傷越しに 玻璃戸/はりど
麦秋や目に目薬の夕映ゆる
紫陽花を生けてより日々過ぎやすき
鳥たちも大瑠璃の声聴いてをり
話すとき轟音とほり姫女苑 轟音/ごうおん 姫女苑/ひめじょおん
受話器の向うに夏霧の湧いてゐる
花栗の散るさびしさに慣れてきし
日に交みつつ傷みつつ糸蜻蛉 糸蜻蛉/いととんぼ
引出しの奥に睡蓮咲きさうな 睡蓮/すいれん
夏痩を言はるる前に言ひしかな
滝の前隣の人を忘れゆき
喉病みてゐても夾竹桃仰ぐ