あるきだす言葉たち から
 
 
 
あまの・こいし   1962年東京生まれ
「天為」編集長   句集「花源」
 
 
 
雨の中
 
 
あぢさゐの青の流れてゆく川辺
 
昨夜よりの雨に耐へたる沙羅の花
 
夏の鴨雨中の巌に立ちにけり
 
鎌倉の谷の深さを梅雨の底
 
波の音低く響ける芒種かな             芒種/ぼうしゅ
 
老鶯の震へる喉を見たりけり
 
七夕の五彩の紐も雨の中
 
ほうたるの位置やの雨に燃え尽きぬ
 
篁の風暮れゆく簾かな                篁/たかむら   簾/すだれ
 
木漏れ日へ開かれてゐる夏館
 
白蝶と童子の舞へる薄暮かな
 
髪洗ふ夕べ聞こえる鳥の声