あるきだす言葉たちから
 
 
たかせ さちこ/1976年生まれ
 
街/鬼 所属   句集/昨日触れたる  第3回北斗賞
 
 
 
 
 
 
小春日や豚毛の筆を指で撫し       撫/ぶ
 
石油缶を水色に塗り小春日は
 
ペインティングナイフの曇り冬めきぬ
 
立冬や働くうなじ固くして
 
水彩の余白を冬の光とす
 
掌に昨日のインク川涸れて         涸/か
 
石垣に捻ぢ込んであり冬菫
 
山茶花やバイク覆ふと生るる角      山茶花/さざんか  生/あ  角/つの
 
皮蛋の透けたる層や雪催          皮蛋/ピータン    雪催/ゆきもよい
 
冬蝿や肺活量といふ力
 
雪も夜のいつまで灰汁を掬ひをる     灰汁/あく
 
聖夜劇鍵盤のごと足並ぶ
 
冬萌に押し返さるる踵かな          踵/かかと
 
銅よりも長し兎の後ろ脚
 
兎になる波と雫になる鳥と