いざつまむわかなもらすな籠の内 春 捨女
さればここに談林の木あり梅の花 春 宗因
酢瓶いくつ最昔八岐の大生海鼠 冬 松意
世に住まば聞と師走の碪かな 冬 西鶴
寒声や名乗りをしつつたが子供 冬 風虎
揉にもむ歌舞妓の城や大晦日 冬 来山
凩の果はありけり海の音 冬 言水
しら雲を吹尽したる新樹かな 夏 才麿
そよりともせいで秋立つことかいの 秋 鬼貫
もろこしに不二あらば後の月見せよ 秋 素堂
鷹一つ見付てうれしいらご崎 冬 芭蕉
越後屋にきぬさく音や衣更 夏 其角
うまず女の雛かしづくぞ哀なる 春 嵐雪
仕着せもの皆着揃ふて春の宿 新年 杉封
いなづまやどの傾城とかり枕 秋 去来
灰汁桶の雫やみけりきりぎりす 秋 凡兆
行々て倒れ伏すとも萩の原 秋 曽良
陽炎の麦ひき延す小昼かな 春 路通
木枕の垢や伊吹に残る雪 冬 丈草
梅が香や客の鼻には浅黄椀 春 許六
さゆる夜のともし火すごし眉の剣 冬 園女
待春や氷にまじるちりあくた 冬 智月
秋成れや木の間木の間の空の色 秋 也有
蝶々や何を夢見て羽づかい 春 千代尼
一夜づつ寂しさ替る時雨かな 冬 巴人