あるきだす言葉たち
 
おんだ ゆうこ/1956年生まれ   
 
 
 
あまのぬぼこ
 
 
 
富士浮かせ草木虫魚初茜 
 
初富士のしろたへ呱呱の声待たむ        呱呱/ここ
 
元朝や錆かぶりたる線路石
 
くろかみのうねりをひろふかるたかな
 
越え来るうゐのおく山湯婆抱く           来/きた      湯婆/たんぽ 
 
つづらをり折れるがうれし冬うらら
 
大杉を斎きまつれる冬日かな           斎/いつ
 
寒すばる天降り来モーツァルトの忌       天降/あも     来/こ
 
別るるや咽に冬晴が閊へ             咽/のみど     閊/つか
 
寒暁やみかへり弥陀は胸はだけ
 
こないとこでなにいうてんねん冬の沼
 
南無といひそのあとはなし冬日向
 
真つすぐに死ぬ時は死ぬ鷹一つ
 
全山とおもふ冬芽のひかりかな
 
酢牡蠣吸ふ天の沼矛のひとしづく        天/あま       沼矛/ぬぼこ