朝日新聞夕刊 あるきだす言葉たち
みやもと かよの 1974年東京生まれ 炎環/豆の木 所属
句集 「鳥飛ぶ仕組み」/現代俳句協会
あかるさに
十月のひかりの橋を渡りけり
山間に垂れさがりたるななかまど
秋の川扉ちらちら開きをり
樟の虚のゆるんで月のぼる 虚/うろ
蓮の実が短き棒をとびこえる
あけがたの紅葉且つ散るしぶきかな
冷やかに時計の螺子の集まれり 螺子/ねじ
颱風が来るビニールの袋かな
顔ぢゆうが金木犀の森となり
手鏡にうつるくちびる小鳥くる
藁塚の倒れて息の生れたる
てのひらのざらりとすくふ薄の穂
指先の鶺鴒となるあかるさに 鶺鴒/せきれい
水澄んでいくつもの音入れ替はる
透明な傘をすべつてゆく秋よ