ながむし/くちなは
 
 
蛇逃げて我を見し眼の草に残る    高浜虚子
 
石仏やどこかに蛇の卵熟れ      石田波郷
 
全長のさだまりて蛇すすむなり     山口誓子
 
若き蛇跨ぎかへりみ旅はじまる     西東三鬼
 
双頭の蛇の如くに生き悩み       野見山朱鳥
 
蛇を見て光りし眼もちあるく       野沢節子
 
向ふ岸へ濡れ逃げ蛇の無辜かがやく    香西照雄
 
音楽漂う岸侵しゆく蛇の飢        赤尾兜子
 
殺したる蛇の長さを計りをり        原子公平
 
蛇を搏ちむなしき胸を波だたす      油布五線
 
死ねば白し蛇も蛙も水中に        右城暮石
 
蛇去って戸口をおそふ野の夕日     吉田鴻司