余一日耆老於故園。渡澱水過馬堤。偶逢女帰省郷者。
先後行数里。相顧語。容姿嬋娟。癡情可憐。因製歌曲十八曲。
代女述意。題曰春風馬堤曲。
 
 
 春風馬堤曲十八曲
 
やぶ入りや浪花を出て長柄川
 
春風や堤長うして家遠し
 
堤下摘芳草 荊与蕀塞路
荊蕀何妬情 裂裙且傷股
 
渓流石点々 踏石撮香芹
多謝水上石 教儂不沾裙
 
一軒の茶見世の柳老にけり
 
茶店の老婆儂を見て慇懃に
無恙を賀し且儂が春衣を美
 
店中有ニ客 能解江南語
酒銭擲三緡 迎我譲榻去 
古駅三両家猫児妻を呼妻来らず
 
呼雛籬外鶏 籬外草満地
雛飛欲越籬 籬高堕三四
 
春艸路三叉中に捷径あり我を迎ふ
 
たんぽぽ花咲り三々五々五々は黄に
三々は白し記得す去年此路よりす
 
憐とる蒲公茎短して乳をアマセリ
 
むかしむかししきりにおもふ慈母の恩
慈母の懐袍別に春あり
 
春あり成長して浪花にあり
梅は白し浪花橋辺財主の家
春情まなび得たり浪花風流
 
郷を辞し弟に負く身三春
本をわすれ末を取接木の梅
 
故郷春深し行々て又行々
楊柳長堤道漸くくだれり
 
矯首はじめて見る故園の家黄昏
戸に倚る白髪も人弟を抱き我を
待春又春
 
君不見古人太祇が句
 薮入の寝るやひとりの親の側