朝日新聞夕刊  あるきだす言葉たち
 
1962年 鹿児島県鹿児島市生まれ  「街」「群青」両道人
 
 
 
七月尽
 
夕刊に文学ある匂ひ蝉時雨
 
コピー機の光のみどり水中花
 
茉莉花や再生紙の白味気なく      茉莉花/まつりくわ
 
尼に尋け尼寺の事薔薇のこと      尋/き   薔薇/ばら
 
寄せて来し蓮華の花弁掬ひけり
 
ぬばたまの舟より鬼灯市に入る     鬼灯市/ほほづきいち
 
ゆびきりの指いまもあり冷し酒
 
人形のはみ出す帰省鞄かな
 
山のあなた削りて墓石合歓の花    合歓/ねむ
 
夕涼みして映写機の空回り
 
閘門の開く間のコロナビールかな      閘門/こうもん  開/あ   間/ま
 
その指も帆なき帆柱地図の上
 
扇風機からシロッコの風ばかり
 
浜木綿やサンテグジュぺリ忌の誕生日     浜木綿/はまゆふ
 
入道雲空母のごとし輝き来