空は相変わらず青い日に

その日が来た。

比較的静かな住宅地 数十年前に建てられた一軒家のドアをあけると彼がキッチンのまえに 立っていた

 

彼を目の前にしたとき

 

上空からクモの糸が垂れ下がってくるような気分になった

 

歩き方も立ち方すらも忘れた頃に彼に出会った

肩の力が抜け自然と笑みがはみ出たのを覚えている。

 

 

彼の名前は 菱谷 良一

 

世間とのソーシャルディスタンスはとうの昔に完成していた

 

男性の中でも小柄な方に入る彼は、地面から2ミリ程浮いてるのではないかと思うほど軽快に歩く。

 

一度口を開くと、軽快に言葉のリズムを作り、ユーモアを句読点代わりに混入させ、身振り手振りで情景を作り、聞き手を魅了する。

 

そのたたずまいは、もうすぐ100歳とは思えない。