■お茶を飲む時間

目黒不動尊のご住職
教えていただいたことのひとつに
「喫茶去」があります。
(目黒不動尊は、正しくは、
「泰叡山護國院 瀧泉寺」といい
平安時代から続く伝統あるお寺です。)


きっさこ」と読み、
調べてみると禅語のようです。

喫茶店の「喫茶」は
この言葉からきているそうです。

ご住職のお話では
会が終わったから
すぐに帰るのではなく、
お茶を飲む時間を持ってから
解散することで、
日常に戻りやすくなります。

とのことでした。

用事が済んだから、次。
次の用事が済んだから、次。
その用事も済んだから、次。

効率的でよさそうに見えますが
あわただしい感じがして
なんだか落ち着きません。

食べ物を消化・吸収するのに
時間がかかるように、
感じたことや学んだことを
消化・吸収するのにも
適切な時間をかけることで
その感じたことや学んだことを
より充実させることができる

という感じです。

例えば、
山登りをする人が
登頂したらすぐに降りずに
登頂にしばらくとどまって
お茶でも飲みながら
「登頂達成」を味わう感じです。

エベレストみたいな厳しい山なら
登頂したらすぐに降りるかも
しれませんが、
それでもちょっと降りて
安全を確保できる場所で
お茶でも飲みながら
「登頂達成」を味わうでしょう。

そんな”味わう時間”を持つのに
ちょうどよいのがお茶を飲む時間
というわけです。

旅行や旅なんかの
楽しい時間を過ごした後に
すぐに帰って次の日に備える、
でも問題はないのですが、
楽しい時間の最後に
お茶の時間を持つことで
「どんな気づきがあったのか」
「何が役に立ったのか」
「何がおもしろかったのか」
など過ごした楽しい時間について
”よい経験”とか”よい思い出”とかを
より感じることで
経験したことをさらに
深めることができます


また、別の見方をすれば、
楽しい時間は
普段の日常に支えられています。

端的にいえば
”楽しくない時間”がなければ
”楽しい時間”もない
わけです。

相対的な存在なのに
”楽しい時間”は続いてほしくて
”楽しくない時間”は
短くなってほしい、という
感じてしまいます。

”楽しくない時間”は
普段の日常の中で
何度も繰り返しているから
当たり前すぎて楽しいとは
あまり感じませんが、
普段の日常を支える大切な時間です。

そんな大切な時間に
楽しい時間から急に戻る
大切な時間を
大切に感じられなかったり、
ときには嫌な気持ちさえ
感じてしまうことすらあります。

それは変化が急激であればあるほど
抵抗が大きいのと似ています。

その変化をゆるやかにすることで
楽しくはなくても大切な時間を
ちゃんと「大切な時間」と
感じることがやさしくなるわけです。

そこに適しているのが喫茶去
つまりお茶を飲む時間、
というわけです。

■全体から気づきを深める

何かを経験している”最中”
その経験をすることで手一杯なので
全体を見渡す余裕は
あまりありません。

”最中”は、
緊張感のある時間です。

”最中”が終われば
次の時間が始まります。

その”最中”の時間で得られた
体験や感覚などの情報は
整理してみないと
何が何だかよくわかりません。

その整理する時間は
緊張状態ではなく
リラックスしている状態
理想的です。

なぜなら、
全体を見渡したしたり、
ゆっくり味わったり感じてみたり
できるのはリラックスしている状態
だからです。

そうして
全体を見渡したり
ゆっくり味わったり感じりすると
様々な気づきを得ることができます。

例えば、
運動の部活動で
とにかく練習する、でも
上達はします。

練習中は集中しますから
緊張状態です。

緊張していると
「今この瞬間」に集中しやすいので
それは練習に適した状態です。

練習が終われば
緊張している必要がないので
リラックスします。

リラックスすると自然に
「今日の練習はどうだったかな」
「何がよかったかな」
みたいに振り返ります。

帰り道に一人で歩く最中であったり
電車やバスに乗って
ぼーっとしているときなどに。

もし仲間とそんな時間を持つとしたら
ただ集まって話し合う方法も
ありますが、
お茶を飲むくらいの気持ち
リラックスして振り返りができたら
今日の練習の成果や
今年の目的の確認などを
共有できるよい時間を持てそうです。

また、お茶を飲むときは
緊張状態になりにくく
リラックスしやすい状況です。

逆に、
一生懸命にお茶を飲んだり
気合を入れてお茶を飲んだりは
そういう目標を持たない限りは
まずできません。

だから、
お茶を飲む時間は
自然とリラックス状態
なりやすくなる、
すなわち、全体を見渡したり
味わったり感じたりする状態に
なりやすくなるわけです。

日常生活の合間、合間に、
お茶の時間を持つことで
今の自分の状況を
全体を見渡す視点から確認でき、
何をどう改善してみると
よりよくなっていきそうかの目星
つけやすくなる、というわけです。

「喫茶去」
いいですよね。





お読みいただき、
ありがとうございます。

プロコーチ10年目、常楽でした。



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