私は軽度の不眠症で睡眠導入剤を飲んで生活している。
何故不眠症なのかはよく分からない。特にストレスを感じている実感もないし、悪いことがあったわけでもない。ただ、一つの事を考えると止まらなくなってしまうことが一因であろう事はなんとなくわかる。

私が小学2年生くらいの頃に地球滅亡説と言うのが世間を賑わせた。今思えば馬鹿らしい話だが、昔の私は信じられないほど無垢で純情で、その話を鵜呑みにしてしまった。
テレビに言われるまま「節電をしろ」「クーラーは28℃」「使わないときは電気を消せ」などの指示を何の疑問もなくこなした。
これ自体は悪い事ではないし、今でも染み付いたその節約癖は何気に役に立ったいる。
だが、私がいくらテレビの指示通りに動いても世間は何ら変わらず回っていく。世界がもうすぐ終わるというのに、彼らは何も思わないのだろうかという訝しい感情が幼い私の心を覆っていった。

それからはずっと、人間について考えていた。何故地球が滅亡するのにあんなに呑気でいられるのか?もし地球が滅んだら私達人間はどうなるのか?死ぬのだろうか?死んでしまったらどうなってしまうだろうか?などと毎夜のように考えているうちに、私はいつの間にか夜に睡眠が取れなくなってしまっていた。勿論小学生に睡眠薬を飲むという発想がある筈もなく、私は毎夜眠れないまま学校へ行き、つまらないと過去の私が足蹴にしていた授業で睡眠を取るという日々を繰り返していた。そうしてしばらくして地球滅亡説はガセだったとわかり、私の睡眠も本調子を取り戻してきた、はずだった。

暫くして私も高校生になり、毎日楽しく過ごしていた。だがそんな中、また睡眠が何故か取れなくなってしまった。ストレスはない。悪いこともない。そう思索を巡らせている内に脳裏に浮かんだのは小学生の時の眠れなかった記憶であった。

私は考え過ぎる節がある。前回書いたように、私は自己への探究心だけは人一倍強く、自己を分析する行為が好きである。それが祟ってか、つまりは寝る前に只管自分の事を考えるようになってしまったのだ。だが、小学生の時と違って私は勉学に励まなければいけない。これで不眠が続けば私はきっと何も出来なくなる。そう思い、私は父が持っている睡眠導入剤を盗んで1錠飲み込んだ。すると不思議なくらい眠気が襲ってきて、あんなに時間のかかった入眠がものの数分で終わった。目覚めも良く、決して疲れが取れたという満足感はないが、眠れたという安心感が私の中で渦巻いた。

それからというもの、私は睡眠薬に依存するようになってしまった。たまに飲みすぎて記憶を飛ばしてしまったり、幻覚を見たりしたこともあった。それら負の体験から一時は控えようとも思ったが、やはり眠れなくなると手を出してしまう。それを飲めばほぼ確実に眠れるから。結局、私は安心が欲しいのだ。自己の探求をやめない私の思考を止めてくれる何かが欲しいのだ。それが分かっていても、何故か"睡眠薬"にだけに頼ってしまう。代替物なんていくらでもある筈なのに。

睡眠薬は決して良いものではない。実際眠りは浅いし、私の飲んでいるマイスリーでさえ記憶がとんだり幻覚を見ることがある。今睡眠薬を飲みながら書いているが、足がふらつくしし、きっとこの記事を書いている記憶も目覚めたら無くなっているだろう。それ以上のレベルの睡眠薬はもっと副作用がある。それでもそれを必要とする者は沢山いる。私の友人にもかなり高レベルの睡眠薬を使用している子が2・3人いる。どうしてそうなってしまうのだろうか。他に方法がある筈なのに、何故薬に飛びついてしまうのか。私にはそれが分からないが、"薬"と言うものはそれだけで安心感を産むものなのだと、それだけは身に沁みて実感する。