yurikaのブログ
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小説(ライフ)1

雨の中を、傘をさして歩いていく彼の後ろ姿が思い浮かぶ。

雨がやむことをじっと待っている私がいる。




ベッドの中で、まるで何もなかったかのように私を抱きしめながら、開き直ったように彼が言う。


「怒っていいよ。きみにはその権利がある。」


まったく怒りはなかった。深い失望がお腹のそこに重く沈んでいく感じ。彼の大きな腕がうしろからまわっている中でただじっとしていた。




さきほど、彼の家のバスルームで、他の女性が泊まったと思われる忘れ物を発見した私は訊ねた。


「女の人が泊まったの?」


「え、うん、あのー、泊まってったんだよね。。。」


「誰? 泊まってどうしたの!?」


「きみの知らないひとだよ!」



ベッドで、私が彼の上にのっかり、言った。「他に泊まる人ができたから、しょっちゅう会うのをやめようと言ったの?」彼は首を振った。

「じゃあ、私の方が好き?」

「…」しばらく黙って、彼は「二人とも平等にしないといけないと思っている」と言った。


冷静さを装っている自分が悲しかった。


あれから3ヶ月。

私の中で何も解決はしていない。


彼にいま「若い女性」に熱をあげているという話を聞いたのはそれから1~2ヶ月後。


その後の1ヶ月で私は5キロ痩せた。その間に、大事な人が3人亡くなった。辛い時期に彼と話したくなって、電話した「何もなかった」ように1時間世間話をした。


胃が切り刻まれるように痛い。

小説(ライフ)2

「君は「今会いたい。すぐ会いたい」というから。」


「えっ?」

そんなこと一度も言ったことないじゃない。

これまで二年近くの付き合いの中で、そんなことはおろか、休日もなく多忙な彼のスケジュールに遠慮して「会いたい」とこちらから日程を提案したこともほとんどない。

連絡さえくれれば、東京にいようが地方にいようが、海外に行っていようが、私は大丈夫だった。会っているという行為よりも、「今日は○○に出張しているの」ということを了解していれば、むしろそうの方が楽だった。これは40過ぎまで、一人で生きてきたから、本音。


心外だったし、なぜそんなことを言うの?と聞いた。

「君は絶対そうだよ」

「…」


悲しかった。



「君は「今会いたい。すぐ会いたい」というから」という殻の言葉には、

「君」でない誰かが想定されていて、私と比べている。

その誰かがバスルームの残骸と関係あるのか、あるいは彼の頭の中のイメージなのかはわからない。


彼に合わせて、二人でいるときの静かで幸せな時間を大切にしたい。細々とでも永く続けていきたいと思っていた私の想いと、彼の考えていることは、一致していなかったことに気づく。


「結婚はしないと言っただけ…」とボソボソ言いながら、ベッドの上で私の背中を彼の手がまさぐる。


結婚してと言った覚えはまったくない。

私がしたかったのは「恋愛」であって、「結婚」ではない。それは今も変わらない。

けれども、彼は普通に考えて、私が次の段階として「結婚」を望むのではないかということを密かに心配していたのだろうか?馬鹿なひと。 そんなことの前に私は「この2年こうしているけど、私たちは本当につきあっているのか?恋人同士なのか?」それは一度確かめないといけないと、まずそれを心配していた。


いきなり、「いまさら僕はもう結婚しないと思う。だから、こうして会っているのは楽しいし、それはこれからも続けたいけれど、あまりしょっちゅうは会わないほうがいいかと思った。勝手だといわれるかもしれないけれど。」という彼からのメールには、愕然とし、大きな悲しみと行き場のない怒りで、ショックだった。


とにかく、会ってちゃんと話をしないとと思い、会って話そうとう彼に返事した。

遅くなった私の誕生祝をかねて、彼の家を訪ねた夜、不幸にも私はバスルームで,他の女性が泊まった痕跡をみつけてしまったのだった。