失くしたり見つけたりの・・・・

失くしたり見つけたりの・・・・

いろんな事をいろいろ語っています。
基本、ミーハーです。

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思春期から、いい大人といわれる歳になるまで、私は『小説J*NE』誌を愛読していました。
気に入った連載小説が載っている時は続けて買ったり、飽きてきたら全く買わなかったり、はまり方にも波があったのですが、
「禁断の愛に目覚めて」という美しくも危険な煽り文句と、男性同士が意味ありげに視線を絡ませ手を繋ぐ表紙をレジに持っていく時のドキドキには、いくつになっても慣れませんでした。
好きな作家さんは何人もいました。
なかでも野/村史/子さんと嶋/田双/葉さんの二人は私にとって特別でした。
マイノリティの生き辛さ、悲しみ、弱くて小さい人たちへの寄り添い、愛おしみ、そういうものが作品からじわじわとにじみ出て、お話の中盤から一気に溢れ出す・・・特に嶋田さんの『bird』という作品には泣かされました。
ビー○ルなんて言葉もなかったころです。最初にこの雑誌を教えてくれた友を除いて、こんなの読んでるって周りに知られたら死ぬわ!とか思ってた頃・・・いろいろ懐かしい(笑)

その小*NE誌に、詩の投稿コーナーがあったのです。
そこの常連さんで、沖/下一/美さんって方の詩が、私はめちゃくちゃ好きだったのですよ。
中でも『旅立ちなどとおおげさでなく』という詩が大好きでした。ここには書けませんが、好きすぎて今も途中までなら暗唱できるという(痛)
あと『青い風景』という、震災で友(恋人?)を亡くした高校生が、かつて二人で歩いた通学路からブルーシートで覆われた町並みの向こうに海を見つけるって詩。
J*NEの特徴としてほとんどが退廃&耽美な詩だったので、沖下さんの飾らないストレートな言葉が印象的でした。だからよけいに心揺さぶられたのかもしれません。
もう一度読んでみたいなあ。

*沖/下一/美さん、ググってみたら、『斜陽の檻』という詩を紹介されているブログ(なのかな?)を見つけました。





おひさしぶりです。元気ですか?
私は変わらず元気です。

ええと、久しぶりにお話を書きました。
といっても、以前に書いていたものを加筆・修正したものですが。
特にどうってこともないお話なので、期間限定で公開記事にしておきます。
◯~エル??みね○う??ナニソレ?って方はこれ以上進まれませんように。
読まれて「ちょっと違う・・・」と思われた方も、それ以上奥へ立ち入ってはいけません。
ではでは。

ずーっと下の方へどうそ。
(某所へのリンクは切りました)


























何も考えずにただ好きでいられるって、幸せですよ。
そう思いません?

去年のaynさんのお誕生日に書いたものです。
拙い文章ですが、峯裕を愛する皆さまに読んでいただけたら幸いです。
※二人の誕生日は中の人たちのそれと同じ設定です。



『誕生日に』


誰かに祝ってもらえるなら、いくつになっても誕生日は嬉しいものだ。 
好きな人が「おめでとう」と言ってくれるなら、なおさら。 




玄関ドアを開けると峯太郎が立っていた。 
「久しぶり」 
そう言って、照れたように笑って。 

約束もせずに峯太郎が訪ねて来るのは珍しい。 
以前ならともかく、この部屋を出て行ってからの峯太郎は、訪問する前には、必ずこちらの都合を尋ねるメールをよこすようになっていた。 
不意打ちの訪問に、裕は少し慌てた。 
もっとも、急に来られて困る理由など、裕にあるはずもないのだが。 

「なあに?どうしたの?」 
「うん、これ」 
ヘルメットをかぶったまま、峯太郎が手に下げていたレジ袋をひょいと持ち上げる 
寒空の下、自転車を走らせて来ただろう峯太郎の頬は冷え切って白く、鼻の頭だけがほんのり赤い。 

「おでん」 
「え?」 
「一緒に食べようと思って買ってきた。裕、今日誕生日だろ?」 
「え・・・」 

思いがけない言葉に裕は動揺した。 
「もしかしてもうメシ食った?」 
「え?」 
その動揺を、峯太郎は裕がすでに食事を済ませたためと解釈したようだった。 
「ごめん、もう少し早く来ればよかったな」 
「違うの!大丈夫。さっき帰ったとこだから」 
「ほんとに?」 
「うん、これから夕飯の支度するとこ」 
「そっか、よかった」 
「うん。ね、峯太、上がって?コートこっち」 
「サンキュ」 

脱いだコートを受け取り、ハンガーに掛ける。 
峯太郎は、お邪魔しますと言って部屋にあがり、買ってきたその袋をダイニングテーブルに置くと、ほうっと大きく息を吐いた。 

「あったかい・・・」 
「良いタイミングだったよ。丁度エアコンが効いてきたとこだから」 
「自転車、廊下に停めたけど大丈夫かな」 
「うん、平気。ううん!峯太!!」 
「えっ?」 
「誕生日だから来てくれたの?それ持ってわざわざ?」 
「え、まあ、そうだけど」 
「嬉しい。ありがとう峯太」 
「お、おう」 

困ったような照れたような、そんなふうに峯太郎が笑った。 
二人で暮らしていた時は、こんなふうには笑わなかった、と裕は思う。 
これまで峯太郎の無自覚のわがままや子供っぽさに、正直傷ついたこともあった。 
でも歳上の女性を好きになって、彼女との別れを自分で決めて、自らの意思でこの部屋も出て行った。 
つらくて苦しかったあの夜を経験して、峯太郎は少しずつ大人になって、そして優しくなった。 

「ん?」 
見つめる裕の視線に、峯太郎が気づく。 
「ううん。おでん楽しみだなーって」 
「言っとくけど、ただのコンビニのおでんだから。料理屋とかの高級なヤツ期待してたらゴメン」 
「あはは、峯太に『高級なヤツ』なんて期待してないよ」 
「だろうな」 
「俺、コンビニのおでんって食べたことない」 
「マジで?」 
「うん」 
「なかなかうまいぞ。俺最近シラタキにはまっててさ」 

峯太郎が、レジ袋から発泡スチロールの容器を取り出し、蓋を取る。 
その様子が必要以上に用心深くて、こういうところがやっぱり峯太郎だなと思って知らず頬が緩む。 

「ほら、うまそうだろ?」 
「うん」 
「ほら、箸」 
小皿に取り分け、割り箸まで割ってくれて、はい、と裕に渡してくれる。 
白くて一見味が付いてないように見えるそれは、しっかり出し汁を吸ってふっくらとしていて。 
噛んでみると、昆布だしと魚介と醤油の旨みが、口の中にじゅんわりと広がった。 

「うっわぁシラタキ、味がしゅんでてうまい!」 
「しゅ、しゅん?」 
「『染みてる』って事。峯太言わない?『しゅんでる』って」 
「言わないよ。なにそれ?岐阜弁?」 
「標準語じゃない?峯太が知らないだけで」 
あはは、と裕が笑うと、あ、今バカにしただろ?と峯太郎も目尻を下げて嬉しそうに笑った。 




テーブルの上には、裕が有り合わせの材料で手早く作った料理と、温め直したおでんが並んでいる。 
それらを挟んで以前のように席に着き、あらためて缶ビールで乾杯をした。 

「ありがとう、峯太」 
「いいよ、何度もお礼言うなよこれくらいで」 
「よく覚えてたよね、俺の誕生日」 
「そりゃ覚えてるよ。俺の誕生日のちょうど一ヶ月前だから」 
「あ~、やっぱり」 

裕が目を細めてふふ、と笑う。 
「は?なにが?」 
「正確には、峯太の誕生日の、一ヶ月と一日前」 
「えっ??」 
「つまり、俺の誕生日は昨日だったんだよね」 
「えっ??うそっ??」 
「でもいいんだ~。峯太がお祝いしてくれるだけで幸せだもん」 
「・・・うお~マジかよ・・・」


そう、その気持ちが嬉しくて幸せで。 
峯太郎のことだから、きっと直前まで忘れていたに違いない。 
でもちゃんと思い出して、帰りに慌ててコンビニに寄って。 
自分の好きな物を裕に食べさせてやろうと思いついて、寒い中自転車を飛ばして来てくれたのだから。 

裕は思う。 
峯太郎の、不器用な優しさが好きだ。 
だから、絶対に未来がなくてもこの恋は終われそうにない。 
自分はたぶん、これからも一途に峯太郎だけを想い続けるに違いない。 

「峯太の誕生日にはお返ししないとね」 
「いいよもう・・・誕生日まちがえたし、おでん買っただけだし」 
「あれ?拗ねてんの?」 
「拗ねてねえよ!」 

少しづつ変わっていく自分たちの関係が、どこにたどり着くのかは知らない。 
でも今、峯太郎の一番近くに居るのは自分なのだという事実。 
それだけでじゅうぶんだと、裕は思うのだ。 




おしまい