ふ

晩秋の苅田の緑煌めける
白き羽裏を返し鳥立つ
里山に雪近ずくも空青し
夫誕生日と結婚記念日
心臓の病進みて腹水の
愛犬秋の日溜まりに丸ろし
鈍き音秋雨の中に続きけり
主亡き隣家の解体の日よ (ぬし)
主亡き隣家あわれやカマキリの
アームのごとき重機の前に (あるじ)
通し隣家に一瞬陽が射す
愛犬の生の余力のはかなくて
墓地に朽ち葉は音立て落つる

戦没の墓標も多き村外れ
アキツは減りて枯れ葉に埋もる
いずくからかブルーシートが風に乗り
枯れ葉と国道小躍りして行く
電線のカラスは庭の採り入れの
済みたる畑一点に来る
採り入れの畑めがけて弾むかに
電線のカラス目の先に来る
嫁ぎしは遅れた田舎に思いし地
初冬の山里やけに愛おし
農に生きし女性(ひと)は我より力あり
難なく瓶の蓋開けくれる農に生きし女(をみな)我より力あり
難なく瓶の蓋開けくれる
冬前の村の気だるさ陽も薄し
都会の賑わい恋いて佇む霜月の風に眠れる村むらや
星々隠して月は鋭し淡々と向かう家路の天気雨
われ待つ愛犬命いくばくぼうぼうの草地となりし地
石垣の構えに昔の屋敷を見んか
数束の造花は風が運びしか
墓地の株つの根元に挿さん
晩秋の斜光に散らばる造花あり
墓地の杉根の元に挿し置く

自払機にいちいち返事返すわれ
こっけいと思いつ老いの可笑しさ
ほくほくとカボチャ煮えたり
鋭くて大き三日月西
