闇の中 3
「授業中、ちょっと寝ちまったとこがあるから、そこの部分だけ空白だけど、それは勘弁してくれ」
「あー」
僕は嫌な予感がして、今しがた受け取ったノートを開いてみた。
彼のノートは驚きの白さだった。
空白が多いと言うか、僕を一番驚かせたのは、今学期に入ってからの授業内容がたったのノート一ページ分しか書かれていないというのに驚いた。
授業によっては一時間の内容だけで二、三ページは使うはずなんだけど。
僕は静かにノートを閉じて思った。
彰には悪いけど、休んでいた分のノートは別のクラスメイトから借りよう。
「ありがとう、彰。君の気持ちは受け取っておくよ」
「へへっ。礼なんかいらねぇよ。友だちだろ」
「……うん」
彼のような友人がいてくれる。僕を気遣ってくれる友人が。僕は恵まれている。
「彰」
「ん? なんだ?」
「今日の放課後さ、ちょっと付き合ってよ」
「おう、いいぜ!」
彼はにかっと笑いながら快く返事をしてくれた。
「でも彼女さんの方はいいのか?」
「……たまには友人と過ごす時間も必要かなって思ってさ」
「おっ。うれしいことを言ってくれるじゃねぇか」
彰はうれしそうにばしばしと僕の肩を叩く。
彼流のスキンシップなのだが、正直かなり痛かった。
「よしっ。じゃあ、今日の放課後はふたりで筋トレしようぜ」
「いや、しないけど」
「マジかよ!」
なぜ筋トレすること前提で話を進めるのか。
基本的にいい奴なんだが、すぐに人を筋トレに誘うのが玉に瑕(たまにきず)だ。
それでも、一緒にいてくれる友だちがいるのは、とてもありがたいことだ。
今の僕にとっては、彰の存在はとても大きかった。
〔つづく〕
登場人物
水無瀬弘海 主人公(みなせひろみ)
高群 七星 主人公と同じ部活の後輩
鈴木 彰 ひたすら筋トレを誇張する、主人公の友人
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編集掲載・緋鷹由理