ここで気になるのは火に当たる心包・三焦がなぜ右の下部、尺中に置かれるのか、火生土がなぜ心・小腸ではなく、心包・三焦をいうのかということではないかと思います。
ここからは心包の働きをあらためて見直したいので五臓のみで表わします。
まず心は君火であり、神を蔵します。
心が邪を受けや傷られれば神が去り死となります。
よって心の代わりに心包が邪を受けることになっています。
君火である心は直接外部に出て働くことはなく、最高司令官としての役目を担っています。
心に代わって外部へ出て陽気を全身にめぐらすことが相火である心包の役目です。
どのように陽気をめぐらすのかを知るには腎のことも理解しておく必要があります。
腎の性質:陰中の陰
陰は精を蔵す 精は志を舎す (霊枢)
志とは継続する力のことです。
腎は水蔵であり津液を主る
腎は堅を欲す
腎の五志は恐 恐れれば消極的な気持ちになります。
これらのことから腎は腎精や津液を消耗しないように堅くして控えめにして性質を持っている臓だということになります。
でも陰中の陰である腎ではありますが、じつは陰だけでなく陽気も含まれています。
これは易の小生卦で見てみると分かりやすいです。
点で表わしたのが陰で線で表わしたのが陽になります。
易では坎(カン)と読み、腎や腎の性質を含んだ意味を持つので腎を的確に表わしたい時に坎の字を当てられていることも多いです。
なので中国の古典を読む際には易の知識もあると深く理解することができます。
. .
____ ←陽 この陽は生命を維持する力や自己治癒力、
生殖力など生命エネルギーが内燃してい
・ ・ る様子が表わされています。
つまりこの陽は腎精です。
この腎精が納められている場所を命門と言います。
命門とは生命力と人体の現象を続けさせる原気の拠り所、または三焦の原気の拠り所とも呼ばれます。
腎にいくら陽気があるとは言え陰中の陰である腎だけでは動くことができません。
そこで陽中の陽である心の相火である心包が腎精と結びつき三焦の原気となり、三焦として気血を生成し体液を全身にめぐらせているのです。
三焦の原気とは化するためのエネルギーと言えると思います。
これらから心包と腎の関係が深いことが分かります。
この関係性を水剋火と表わします。