あなたの中には

いる箱といらない箱がある。


お気に入りでボロボロになってしまった水色のカバン

ピカピカのギター。


今までいらないものはわりとあっさり捨ててきたと思う。


彼は一流企業で働いている。

エンターテイメント系の

エンジニア。


プロジェクトリーダーとして

チームで

海外と国内を飛び回る。


帰ったら育児をして

休みの日は子供を外に連れて行く

理想を絵に描いたような人生だ。


しあわせであろうその人生に

何かのタイミングで

あなたの中に小さな箱が産まれた。


その箱には名前がなかった。


よく歌の歌詞にある

「この気持ちには名前がない〜」

とか言うやつだ。


順風満帆な彼の人生で

異変が起きていた。

システムエラーだ。


恋はしあわせな誤算だ。

制御不可能なときめきが伴う。

それはマジメな彼にも例外じゃなかった。

意外。


いる箱、いらない箱。

そして名もない箱。


恋というカテゴリーで

あたしは大事にされていた。

あたしだけが入れる箱だった。


あなたは好きな時にのぞいて

あたしをかわいいと言ってくれた。


いつも逢えるわけではないけど

トントンとノックすると

答えが返ってきて

大切に扱ってくれた。



真夜中にはそっと箱を開けて

おやすみをいってくれたりした。


元々口数が少ない彼の

短い言葉はあたたかく

抱きしめられたような気持ちになった。


前回のデートは2月。

「34月は忙しいんだけど

それでも大丈夫?」

と聞いていたからだ。


でも安心して待ってられた。


「必ず、逢えるようにするから」

と約束があった。


5月。

いつしか箱は閉じられたままになった。


あぁ、今は余裕がないのね〜

と軽い気持ちで待っていた。


数えてみれば

3か月逢えていなかったけど

そっと手をあてて

箱の温度を確かめてみた。

温かかった。


あぁ、大丈夫だ。


彼が抱えるプロジェクトが忙しいのは

よくわかっていた。


だからこそあたしが必要だった。

一時期、別れてはいたものの

3年のつきあいで身にしみていた。


こんなことでジタバタしてたら

成立しない。


逢える頻度が減っても

あたしは変わらなかった。


婚外恋愛だからだ。

逢えない理由がはっきりしている。


それでもフツーの恋愛と

愛しいきもちは同じで

内側からあたたかくあふれでていて

しあわせだった。


次逢えたら

何しよう?


この気持ちを伝えたいな〜。


名前のない気持ちを。







わたしは振られた。

別れようと言われたわけではないが
無理だなと思ったというのが正しいか。


彼とは、
逢えばいつも時間があっという間だった。
いつも足りなかった。

彼もわたしも口下手で
人と共通項があってもそれを会話でどう広げていいのかわからない不器用さがあった。


なのに
相手を知りたくて、
自分を知ってほしかった。

よく覚えてはいないけど
3時間半お互いのことを話し続けた。

わたしにとって彼は
区切りのつけられない人だった。


人にはものさしがあって

この人はこのくらいの距離。
あの人はもう少しなかよくしたいな、など
無意識に間合いを測っている。

彼はそのものさしを意識させない人だった。

最初はもちろん探りさぐりなのだが、
「あ、この人大丈夫かも」と安心できてからは早かった。

わたしたちはあるサークルで知り合い、
顔と名前は知っていたものの実際顔をあわせたのは2回だった。

しかもほとんど口を聞いたことがなかった。

当時SNSの中心はmixiだったので
相手の情報はSNSで知る程度。

年に1、2度絡んでくるだけで日常にはまったく関わりのない人だった。

ある日、おばあちゃんの送ってくれたいちごがおいしくてとまらないとTwitterでつぶやいたら「いちごはいいよね〜」とリプライが来た。

ユッカ「太っちゃってやばいなぁ」
彼「いちごなら大丈夫じゃない?そんなふうにはみえないけどな、やばいん?」
ユッカ「やばい〜ヤバいよ〜」←出川かw
彼「今度飲みにいきませんか?」

何?なに?
飲み込めないまま返事をする。

「え???いいけど・・・」

なんか聞いてほしいことでもあるのかなと思っていたら、

すぐにLINEがきて
「ユッカさん。これであってる?」と言われてはじめて、LINEも繋がってたんだと笑ってしまった。

FacebookもメールもLINEも知っていたのに個人的に連絡をとろうとしなかった。

なぜかこのタイミングでふたりで逢うことになり、
のちに大切な人になるとは思ってもみなかった。

オハナシは続く。