おれはヒチョルとチャンミンのジャマにならないように、少し後ろに下がった。
修道女はもう息がおかしくなっていて、目もうつろになってきている。
血液が気管に入ったのか、息を吐くとボコボコと音が鳴り、吸おうとしてもゼーゼー言うばかりでうまく吸えなくなっていた。
「そろそろだな。」
「マジで美味しいのかな。」
ヒチョルは指を鳴らし、チャンミンは舌なめずりしているのが後ろからでも見えるようだ。
「先に、始めようか。」
ヒチョルがチャンミンに向かってデスサイズを振って見せ、チャンミンがうなずいて。
「ここ、狭くない?」
「確かにそうだな。外に出るか。」
そう言ったヒチョルがチャンミンの二の腕を掴む。
「痛っ。何すんだよ!?」
「いっしょに移動するんだよ。俺が先に飛んだらおまえは抜け駆けするだろうがよ。」
「そんなことしないよ、正々堂々と闘う!」
こんなときなのに、仲が悪いのかいいのかわからない感じでわちゃわちゃしながらふたり同時に消えた。
おれは寸の間どうしようか迷って、ふたりの後を追う。
修道女がこと切れるのはもうすぐだろうけど、少しくらい放っておいたって魂が離れてしまうことはない。
不慮の事故や事件なんかだと、自分の死に納得できなくて早いタイミングで離れてしまうこともあるけど。
自死の場合はおとなしく待っててくれることが多い。
それも考えた上でふたりはこの場を離れることを選んだんだろう。
ふたりの気配をたどって飛ぶと、広い修道院の裏の畑の上でふたりがにらみ合っていた。
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