夕方の診療の準備があるから、そろそろ出勤するというチャンミンといっしょに家を出る。
役所の出張所はソン医院からまだ1kmばかり向こうだ。
「なあチャンミン、もしかしたら家や土地を担保にしないといけなくなるかもしれないけど、いいか?」
「いいも何も、全部ユノの物なんだし、ぼくがとやかく言えることじゃないよ。それに、」
「うん。」
「ユノは従業員のみんなを路頭に迷わせるような、無茶なことはしないって信じてる。」
「うん、もちろんそのつもりだよ。」
「それでも、もしもうまくいかなくて何もかも手放さなきゃならなくなったら、」
チャンミンはそこで言葉を切って、となりを歩くおれを横目でちらりと見て、フフッて笑った。
「何だよ、ここ笑うとこか?」
「ごめん、けどもしそうなったら、」
ん?
「ぼくが養うから心配しないで。」
「へ?」
おれが仕事なんかしなくていいって言ったときは、養われろって言うのかって怒ったくせに。
男の意地とプライドを見せつけたくせに。
あのときのことを思い出したけど、おれはチャンミンとは違うことを感じていた。
「おお、そのときはおまえに頼るから。」
弾けるような笑顔を見せたチャンミンの肩をガシっと抱き寄せて肩を組んで歩く。
誰が見ていたって構わない。
だっておれたちは家族なんだから。
辛いことがあれば助け合えばいい。
哀しいことがあれば慰め合えばいい。
楽しいことがあれば笑い合えばいい。
おれたちは家族なんだから。
「おじいちゃんの100日法要なんだけどさ、」
この先ずっと家族なんだから・・・・・
完
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
え?終わっちゃったっ?!(;´・ω・)