なまじかその国の言葉が分かると、旅はより一層深くなる。


その国の一般人の「日常会話」がモロ、盗み聞き出来るからである。


特にイタリア人なんて、日本人旅行者が自分たちの会話を理解しているなんて微塵も考えないものだから、かなり「素」の姿を晒してくれる。


言葉が分かると腹が立つ事も多い。

今回の旅は、ちょうど学生たちの春休み期間という事もあり、日本の大学生が大挙してイタリアに押し寄せてきていた。

実年齢も若く、見た目はさらに若く、小さく、可愛らしく、ペコペコと礼儀正しく・・・な彼ら。

相手を威圧する要素が何もない。

ペコペコと礼儀正しいっていうのは日本においては愛されポイントなのだが、外国に出ると残念ながら

「なめられる」

の一言で終わる。


プラダの店に入って各店員に愛想よく挨拶する彼ら。

そんな彼らをイタリア語で平然とバカにしている店員達。


ローマには日系デパートがあり、日本からのツアーがよく立ち寄るポイントになっている。

そこの店員にも、最悪な態度を取る輩がいる。


片言の日本語を話すスタッフが集められているのだが、日本語で

「ハイ、コレハピスタチオのチョコレートネ」

とかぞんざいに試食品を配った後、イタリア語で

「結局買わねーのかよ。買えよ、馬鹿ども」

と毒づいたりしている。


この時はあまりにもイラっとしたので彼に近寄り、イタリア語でベラベラ話しかけたらちょっとギョッとしていた。ふん。


たしかに。


正直、キャピキャピと群れて、身分不相応な旅行をして、イタリア人にとっては「これの何が良いの?」と思うような商品を店の思惑通りに買って、レストランに入ったら半人前しか食べられなくて、お酒を飲んだら一口で真っ赤になって、通りゆく人々にからかわれてもニコニコしている


日本人大学生の群れは、馬鹿にされてもおかしくない事は確かである。


でも、あなたは店員。彼らは客。

就業中は「客に対する態度」というものがあるでしょう。


やはり、言葉が出来ないとなめられる。

なめられないようにするには、実は思いっきり高ビーな態度を取るに越したことはない。

プラダの店に入ったら店員に笑顔なんて見せる必要はないのだ。

ドアを開けてもらったら無表情&小声でGrazie。 これで十分。

ドアマンの顔を見上げ、笑顔でお辞儀までしちゃいそうな勢いで(笑)GRAZIE!!と叫ぶことなんてない

もちろん、その後一人の店員と話し込む事があるのであれば礼儀を持って接する事が必要だけれど、愛想よくし過ぎるとヨーロッパのとあるシチュエーションでは却って評価が下がるってのも若く見られがちな日本人が知っておくと良いことだと思う。


・・・なんて分かりつつ、日本社会でドップリ育った私も、やはりドアマンににっこりしてしまうタチではあるのだが・・・。


なかなか難しいですよね、高ビーになるのって。




一方、言葉が分かると旅の面白さも数倍増になる。


町中で聞こえてくるイタリア人同士の会話。こーれが面白い!

アメリカで暮らしてて毎日人々の日常会話を聞いていてもブログに書く程面白い会話を盗み聞きしたことがないので、やはりイタリア人は面白いのだろう(笑)


今回は、電車を降り待ちをしている5分間でマブダチ化していたおばちゃん二人の会話。

(ローマ→フィレンツェの移動)


降車口で並んだ二人。推定50代。

5分間も無言で過ごせないんでしょうね。話し始めた。


「お家に帰るの?」

「そう、フィレンツェにはもう28年住んでるのよ。元々ローマ出身なんだけど。」

「私はローマに住んでるのよ。フィレンツェはどう?」

「街はとっても綺麗で住みやすいんだけど・・やはりローマとくらべて人が冷たいわ。やはり北の方は人が・・・ね。」

「!!!あなたもそう思う??!!そうよね、そうよねー。やはりローマの人は温かいわよ。でも確かにフィレンツェの街はとても綺麗ね。」


と、恐らく「フィレンツェ人」が大多数を占めているだろう降車口で大声でローマ称賛していた二人。

その後話は自分たちの家族構成にまで広がった挙句、


きました。時勢問題!!


「新しい教皇決まったわね。あの、ベネズエラ人の。」 (※アルゼンチン人です。)

「そうそう。そもそもベネズエラってどこよ?」

「ハハハ、しーらない。南米かな。」

「何でイタリア人じゃないのよー。」

「ねー。」

「私的にはねー、あの人は年寄りすぎよ。85歳とかでしょ?!いくらなんでも年取りすぎよー。」

 (※76歳です。)

「そうよねそうよねー。」


と、残念な誤情報を仲良く共有。

もうこの頃にはマブダチ化し、相手の肩に手をおいたり背中を叩いたりのボディータッチを含む会話。


そしてドアが開き、お別れの時。


「じゃぁね、あ、私の名前は○○。」

「私は☓☓。」


と、混みあう降車口で互いにキスをして挨拶をする彼女ら。


もう、爆笑であった。

イタリアおばちゃん、恐るべし。