Txima Archives

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中学時代の同級生、KUMAKIA、慧刀春、N君による創作サークル

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 村の入口へと向かってる途中、怒鳴り声が聞こえてきた。何人かが争っているようだ。その時、乾いた破裂音が鳴り響いた。空気を詰めた袋を、おもいっきり叩き割ったような、そんな音。その音が鳴ってから、急に争う声が消えて、静かになった。
 おかしい。マレクは歩みを止めた。このまま歩みを進めることに、なにか危険を感じた。
「どっか、影から様子をみた方がいいよな…」
 一人、呟く。そしてゆっくりと歩き出した。足音を殺して。

 村の入口付近にある一軒の家の影から、マレクがこっそり顔を出す。鉄の防具と真っ赤な隊服に身を包んだ、十数人の男たちが、村人たちを囲んでいた。長細い筒のような物を住人に向けている。怯えてる皆の様子を見ると、あれは武器か何かだろうか。

 マレクはふと気がついた。赤黒い染みが、地面に出来てるのを。心臓を氷の手で捕まれたかのような気持ちがした。あれは血だ。誰かが、切られたのだ。それともあの武器にやられたのか。
 死体は見当たらない。マレクは村人達の間を必死で探した。見知った顔は、皆不安に歪んでる。そして、いた。

 マレクの父親は無事だった。マレクは、静かに息を吐いた。みた限り怪我人は居ない。撃たれた人は何処かで治療を受けてるのか、それとも…
 マレクは不吉な考えを頭から振り払った。とにかく、僕が皆を助けなきゃ!

 でもどうやって? 敵の数は十数人の大人の戦士。相手は武器を持ち、こちらは短い剣が一振り。しかも村の外にはまだ仲間が居そうだ。その時、

「―――ッ!」
 マレクは後ろから口を塞がれた。
「騒ぐな、俺だ」
 それは、聞き覚えのある声だった。マレクが抵抗を止めると、塞がれた口から手を離した。振り返る。
「ジエサ!」
「しっ! 静かに」
 マレクは頷いた。ジエサは、マレクの兄だ。今はベースに行ってる筈なのに、何故…
「ベースがダメになった。早馬跳ばしてきたんだが…」
 マレクの気持ちを察したのか、兄が説明する。
「村についたら…なんなんだよ、これ」
「僕も…わからないよ」
「とにかく、だ」
「うん、皆を助けなきゃ!」
「その前に…あそこに捕まってる中に、キルケが見えないが、お前何か知ってるか?」
「キルケなら、フリードさんと教会の方にいたけど…」
「そうか…。あの方が無事だったなら、大丈夫だ。とりあえずここから逃げるぞ」
「ど、どういうこと? 皆を見殺しにするの? それにキルケがあの方って?」
「お前を危険に巻き込む訳にはいかない。もしお前に何かあったら父さんに…そして死んだ母さんにも会わせる顔がない」
「で、でも―――ッ!?」
 その時、ジエサの拳がマレクの鳩尾に入った。
「それに心配するな。村の皆なら、いずれ殿下が救って下さる」
 その声を最後に聞きながら、マレクの意識は闇の奥へと薄れていった。



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 轟音、爆音、炸裂音。なんでもいいが、事態がさらに急変したのは間違いなかった。理解が現実に追いつかず、パニックを起こしかける。
 爆音は二度、三度と連続した。熱風に砂埃が舞い上がり、視界を黄色く濁らせる。激しい衝撃に地面が揺れ、マレクはバランスを崩して転びそうになった――それでもどうにか踏みとどまり、視線を凝らす。
 見えたのは、村の入り口近くにある民家が吹き飛ぶところだった――人を熱砂と太陽光から守る頑強な煉瓦が、まるで玩具のように頼りなく崩れ落ちる。信じられない光景だった。壁が倒れ、屋根が落ちる音が、離れた場所にいるマレクたちの耳にも聞こえてくる。
「そんな……!」
 キルケが驚愕に目を見開く。マレクも同じ心境だった。こんなものは見たことがない。聞いたこともない。
 頑丈な煉瓦造りの家は害獣を寄せつけず、竜巻にも耐えるほどの強度がある。大夏期の間に放置されても、大した損傷もなく建ち続けていることも珍しくなかった。
 そんな一軒家を、いったいどうすればここまで容易く破壊できるというのか。
「……火薬兵器です」
 呆然と立ち尽くしていると、神父がぽつりとつぶやくのが聞こえてきた。
「爆発する粉を用いて、鉄の塊を撃ち出す武器――恐らく、軍新式の大砲でしょう。村の中心を狙わなかったのは、射程の限界か威嚇のつもりか……」
「……そんなものを持ち出すなんて、“国”も本気ってことね」
 うめくように、キルケ。
 その表情には苦渋が滲んでいる。村に被害が出たことに胸を痛めているのか。せめて、あの家が無人だったことを祈るしかないが……
 爆音は既に止んでいた。代わりに、焦げ臭さを含んだ風が吹き荒れている。避難はほぼ完了していたのか、村人たちの声は聞こえない。あるいは単に声も出せない状態に陥っているのか。
「……神父様。いったいなにが起きているんですか」
 震える声で、マレクは訊ねた。
「あなたは、なにか知ってるんですか――どうして僕らの村がこんなことに!?」
「ごめんね。詳しくは言えないわ」
 横から不意に口を挟んだのは、キルケだった。
 彼女は顔を伏せ、ほとんど囁くような声量で続ける。
「とにかく、今は逃げてマレク。村の中は危険だわ。例の洞穴で落ち合いましょう」
「き、キルケは? キルケはどうするのさ?」
 言いようのない不安を感じて、マレクは訊ね返した。手先の震えはズボンの裾を握って誤魔化したが、声の震えは隠しようがない。
 キルケは答えなかった。こちらの問いかけを無視して、神父に向き直って口を開く。
「フリード、行くわよ。宝玉を確保する――あれを連中には渡せない」
「分かりました、殿下」
「キルケ!」
 必死に呼びかける。だが、彼女はマレクの方を見もしなかった。ただ去り際に、ぽつりとこぼす。
「……分かってるでしょうけど、大夏期を越すための物資に余分はないわ。あんたが今背負ってる分も含めてね」
 言われて思い出す。そういえば、ベースへ向かうための荷を背負ったままここへ来てしまった。あまりの事態に忘れかけていたのだが。
「それがなくなれば、飢えるのはあんたの家族よ。そうなっても誰も助けない。そんな余裕はないから。あんたには、その荷の分だけ責任があるの。忘れないで」
 それだけ言い置いて、彼女は走り出した。マレクは動けない。
 神父がぽん、とその肩を叩いた。
「じき、ここにも軍が突入してきます――急いでください。彼女には、私がついていますから」
 そしてフリード神父もきびすを返す。駆け出すと、すぐにその背中は小さくなっていった。
 それを見つめて、しばし呆然とする。
 動き出すべきだと分かってはいたが、まだ躊躇いがあった。それが足を止めている。
 だが、やがて彼も走り出した。背負った荷が肩に食い込む。苛立つほどに遅い足取りで、家族の待っているはずの洞穴へ向かう。
(責任……か)
 そんな言葉が心に残った。そう言った彼女の横顔も。
 足を動かすたびに剣の鞘が引っかかる。頼もしかったはずの剣の重みが、今は少し煩わしかった。
 静まり返った村に、がちゃがちゃと鉄のこすれる音が響く――時刻は正午。第二の太陽が、地平線に沈む。
 残る太陽は天にふたつ。



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 何があったんだ、と、マレクが出し掛けた言葉をキルケは背中で振り切り、村の中央へ向けて駆けて行ってしまった。
 その方角は既に打ち壊された教会跡がある辺りだ。今さら何もなくなった筈の場所にどんな用があると言うのか。そして、村の全滅とは。
 マレクの一瞬の逡巡は、剣の柄に手を触れた瞬間、吹き飛んでいた。
「父さん!先に皆が集まっている洞穴へ行って下さい。すぐに戻ります!」
 父が振り向く間もなくマレクは駆け出していた。
 行商はつい先程までベースの状況を話して聞かせられる程度には息があった。
 死んだと言ったキルケを信じるとすれば、つまり彼を死に至らしめたのは普通の怪我以上の何か、もしかすれば村人をも危険に晒しているその何かかも知れない。
 キルケの姿は瞬く間に見えなくなってしまっていて、何日分もの荷物を負っているマレクには、とても追いつける筈はなかった。
 どうにか目印になる神像が見える所にやってくると、ポツリと佇む一台の荷馬車の影に、既に忙しなく働いているキルケらしい少女の影がある。
 そして気になるのはもうひとつ、どこかで見たような大柄の影。
 何事か緊迫した会話が漏れ聞こえるのに気づいたマレクは咄嗟に岩陰へ身を隠していた。
 「こんなタイプは初めてだわ。厄介ね」
 キルケに違いない。マレクは耳をそばだてた。
 「殿下・・・。これだけの事、とても偶然とは思えません」
 答えた男の声は神父様によく似ていた。
 「まだ解決策が無いのだもの。下手に皆に事実を公表して、余計なパニックを起こしては、更に避難を遅らせるだけだわ」

(誰と話しているんだ。こんな冷たいキルケの声、今まで聞いた事がない)
 姿を確かめようと岩から身を乗り出したマレクに、ロバが気付き嘶いたのは、次の瞬間だった。
「誰です!?」
 神父が叫ぶ。周りにこれといった遮蔽物がない以上、観念したマレクは二人の前に姿を表すしかなかった。
「キルケ…?」
「マレク!?」
 想像通り、声の主はキルケと神父様だった。ただ想像の外だったのは、彼らにとってのマレク自身だ。
「君、今の話を聞いていたのか?」
「…いいや、僕は何も」
 厳しい形相で詰め寄る神父をキルケが、素早く手振りで遮り、目線で制していた。
「そんな事より急いで!聞こえなかったの!?直ぐに避難するの!でないと―――」
そんなキルケの声を更に遮る爆音が、村の入り口の方角から轟いた。





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 自宅へ向かうと、マレクの父が玄関の前で跪いていた。数年間過ごした家に感謝の祈りを捧げ、別れを告げるのだ。
 マレクもその横へ向かい、同じようにする。一瞬父が目を開き、こちらを一瞥したが、またすぐに目を閉じて祈りに戻った。

 3年間僕らを守り、住まわせてくれて、どうもありがとう。どうか大地と風が、あなたを受け入れてくれますように。

 簡単に祈りを済ませて、立ち上がる。同時に父も祈りを終わらせて、ゆっくりと立ち上がった。
「マレク、こんな時にどこへ行ってたんだ」
「ごめんなさい。村外れの森で、剣の素振りしてた」
「もう直、出発の時間だ。早く準備しなさい」
「はい、父さん」
 マレクは玄関の近くにおいてあった荷物を背負った。多くの家財道具は荷車に積んである。人が背負うのは、テントや食料、水など、ベースに着くまでに必要となるものだ。荷車の荷物は落ちないようにしっかりと縄で固定され、急な雨にも対応出来るよう布を被せてあるので、ベースに着くまでは荷を解かないからだ。
 荷車はロバに引かせる。元々マレクの家には9匹のロバが居たが、若くて元気な3匹を残し残りは他の家に分けたり、食料として処分した。多くの家畜は移動の手間になり、獣に襲われた時にも守り切れない。

 マレクがロバに出発前最後の餌と水をやっていると、村の入口から太鼓の音が聞こえてきた。出発の、合図だ。
 だが、何か違和感を感じる。いつもは集合を掛ける時、太鼓の音をゆっくりと大きく打ち鳴らす。しかし今聞こえてくる音は、間隔が短く、そして激しく、まるで皆を急がせるかのようだ。

「何かあったのかな」
「うむ…。分からんが、急ぐぞ」
「はい」

 マレク達が村の入口へ向かってる時に、キルケとすれ違った。顔に焦りの表情を浮かべ、走っていた。

「あ、キルケ。例の行商の人は?」
「死んだ」
「え?」
「それより、急いで!


―――このままだと、村人が全員死ぬわ!」



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 第三の太陽の出現に合わせて、地表の気温は際限なく上がっていく。
 なにせ夜が来ないのだ。逃げ場をなくした放射熱は、急速にそのエネルギーを高めていくことになる。蓋をしたかまどみたいなものね、とはキルケの弁だ。
 ベースへの出立は、第一太陽が中天に差し掛かる頃……大夏期以前の時間で言えば昼前に当たる。今年はちょうどその時間に、第二の太陽が地に沈むらしい。そうなれば気温の上昇はかなり緩やかになり、その分だけ移動の負担も抑えられるのだ。
 第二太陽が再び姿を現すには、それから丸二日ほどの間が開く。それまでに、できるだけベースへの距離を詰めなければならない。

 サベル村にもどると、なにやら騒ぎが起きていた。尋常な事態ではないらしく、村人たちの顔にも困惑の色が見える。
 そのせいか、キルケの顔にも厳しいものが浮かんでいた。あるいはなにかを感じ取ったのかもしれない。
 彼女が顔見知りの農夫を捕まえると、こんな話が聞けた。
「なんでも、旅商がひとり通りがかったらしい。怪我で難儀してたらしくて、今、村長の家で手当てしてる。それで出発が遅れてるそうだ」
「旅商? こんな時に?」
「又聞きだが、南の方から流れてきたとか。隊商からはぐれたらしいんだが、どうにも、南のベースが危険だと言ってるらしくて……まあ、詳しいことは村長に聞いてくれよ」
 時期が時期だけに、村人たちが浮き足立つのも当然である。マレクの胸中にも形のない不安が沸き起こりつつあった。嫌な感じがする。
 キルケの方を見ると、彼女は口元に手を当てて何事かつぶやいていた。
「旅商ひとりにかまけて、村の移動を遅らせる……? 爺様の判断なのかしら」
 と、こちらの視線に気がついたのか、彼女は慌てて表情を取り繕った。
「……まあ、よくあることよね。さてと――あんたは家で出発の準備をしなさいな。急がないと置いていっちゃうからねー?」
「で、でも、キルケ……」
 不安がつい口を割りそうになるが、ぐっと堪える。
 剣の柄に軽く触れ、代わりに告げたのは別の言葉だった。
「……うん。僕も家が気になるから、一度帰るよ。ありがとうキルケ」
「あいよー」
 ひらひらと手を振って、キルケが背を向ける。そのまま彼女の自宅へ向けて小走りに駆けていった。
 マレクもその場できびすを返した。村はベースへの移動に備えて、家畜と畑のほとんどを処分してある。
 殺風景で静かな場所。死につつある地上のひとつの村。
 彼が走り出すと、剣と鞘がこすれる音が小さく響き渡った。



writer$Txima Archives-Mr.N
 マレクを含め誰一人として、やがて来る旅を待望している者はいなかった。

 緑を追い、大陸を日夜放浪して回る野生の獣達は、大夏期だからと言って、以前の住処である枯れた地へ戻り、わざわざそこから地中に潜るという様な生態は持っていない。
 その群の分布が、例え大夏期の一周する三年間さほど変わらず、すぐ隣あう別の入り口から地下道へ潜ったにしても、それぞれの結接点へは、幾週間も歩き続ける必要がある事さえ珍しくない。
 併せて、そう言った地上の動物を捕食しようと活発になる、更に巨大で、獰猛な地底獣も、ぞくぞくと移動し始めるのだから、人間様は毎度面白い様に翻弄され、右往左往する生活を余儀なくされる。前回安全だった場所が、今回も安全とは限らないのだ。
「今度ははどっちの方のベースに行くんだろうね。遠くないといいんだけど」
 村の喧騒が近づくにつれて、以前から胸の内にあった疑問を思い出したマレクは、村長の孫娘であるところのキルケに、某か知っている可能性を探ってみた。
「うーん、南の11号辺りじゃない?今年は北が危ないって父さん達が話してたから。まあ、どの方角だろうと獣は居るわよ」
 やはり確定的でなくとも若干の噂程度は聞きかじっているらしい。胸の中にある不安を小突くように指摘され、マレクは小さく呻くしかなかった。
「・・・そう、だよね」
 地下には、サベル村がすっぽりと入る程の空洞が至る所に存在し、人々はそれをベースと呼んで、大夏期の間を過ごす拠点としていた。
 ベースでは持ち回りで村の猛者何人かが、常時安全を監視しており、月に一、二度その状況が伝達役によって地上に伝えられる。マレクの兄やキルケの父も今はその任期に当たっていた。
「心配しない!アタシがしっかりしごいてあげるわよ。見習い剣士さん♪」
 指導者の血筋らしい頼りがいを感じさせられ、マレクはまた少し情けない気分を味わった。
(いつかは、僕がキルケを助けられたら・・・)
 村人として剣を持たせられるという事は、一人前として認められたという以上に、村に守られる側から、村を守る側へと責任を預けられた事を意味し、子供達も言葉にこそしないが、それは良く分かっていた。
 腰にした剣の鞘にそっと触れ、マレクは徐々に形を無くしつつある村の風景に目を転じた。



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 その日、879日ぶりに第三の太陽が顔を見せ、暦上の季節は大夏期へと移り変わった。
 第三の太陽は、大夏期の間沈むことなく、北の果てから南の果てまで120日かけてゆっくりと移動する。
 その間に地上の水は渇れ、木は朽ちはてる。
 その為地上の生き物たちは"地底"に潜り、短い眠りにつく。地上は9日もしないうちに荒野となり、命の気配は消え果てる。
 だから、サベル村ではもう一月も前から移住の準備を進めていた。
 何ヵ月もの間"地底"に潜る為、日干しにした食料をたっぷりと貯蔵してある。
 それに"地底"には光が届かないから、火が必須だ。
 近隣の樹木は全て切り倒し、薪にした。そして、"地底"の獣から 身を守る為、人々の剣はするどく研がれてあった。
 マレクは、村はずれの丸裸になった森で切り株の一つに座り、自分の剣をまじまじと眺めていた。
 初めて持つ自分の剣だ。鈍く黒光りする刀身に、彼自身の瞳がうっすら映っている。
 マレクは"地底"に潜るのはこれで3度目だが、武器を持たせて貰えたのはこれが初めてであった。
 小振りだが、ずしりと手の内に感じる鉄の重み。
 マレクは12歳になるまで、まだもう少しかかるのだが、この重さは大人の証の様な気がして、嬉しさが込み上げてきた。
 
 「なぁに、ニヤけてんのよ!」
 突然後ろから声をかけられ、マレクは思わず剣を落としかけた。
 「…なんだ、キルケか」
 振り返るとそこにいたのは、同じ村に住む、2歳上の少女、キルケだった。既に村を出る準備をすませてあるらしく、大きな荷物を背負っている。
 「なんだは無いでしょ! こんな所で何してんのよ」
 「べ、別に…」
 マレクは手に持っていた剣を後ろに隠した。
 「なに、あんた。剣を持てたのがそんなに嬉しいの? お子ちゃまねぇ」
 「う、うるさい! それより、何か用?」
 「何か用? じゃない! あんたのお父さんが探してたから、呼びに来たの。もうすぐ出発の時間でしょ。あんたも早く準備しなさいよ」
 「分かってるよ」
 マレクは立ち上がり、剣を鞘に戻し、少し手間取りながら腰のベルトに吊るした。その重さが、なんだか誇らしかった。
 「じゃ、行こうか」
 二人は村へ向かって歩き始めた。
 


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