ドリームのイマジンブック -2ページ目

ドリームのイマジンブック

ここはイマジンワールドと現実世界を結ぶ、狭間の空間。
そこではドリームが自分やイマジンワールドにいる誰かの想いを伝える「案内人」として活動している。
この本はそんな世界をつなぐ鍵となっている。

 

※このエピソードは「嘘つきなんて大嫌い」の続きです。まだ読んでいない方は先に読んでおくことをおすすめします。

 

 

―あらすじ―

これはホープが少女失踪事件に巻き込まれた後の物語。友達だと思っていた3人に裏切られ、逆上して禍々しい扉を召喚した。その扉を召喚した直後、彼女は倒れてしまう...

 


 

 

―ホープが次に目を覚ましたのは病院のベッドだった。目覚めて早々、彼女は親友を探しに病室を飛び出してしまう。看護師数名に取り押さえられながらも、なんとか落ち着きを取り戻す―

 

 

《医師》

ホープさん、落ち着いて聞いてください

まず、あなたのご友人のことですが...

 

ご友人は生きています

ただ...長くは生きられません

 

《ホープ》

えっ...?

それってどういう...

 

 

 

――ピラッ...

 

 

 

《医師》

これはお二人の心をレントゲンで撮ったものです

これがあなたの心で...

こちらがご友人のものとなります

 

見ての通り、ご友人の心は崩壊寸前...

下手すれば死亡する危険性もあります

 

《ホープ》

そんな...!

ももちゃんが...死ぬかもしれないなんて...

 

《医師》

それと...ホープさん

あなたも死亡する可能性も薄くはありません

 

《ホープ》

わ、わたしも...?

 

《医師》

はい、こちらを見てください

この通り、あなたの心は半分ほど壊れています

今は大丈夫でも、今後の生活次第で崩壊する可能性があります

ところで、ホープさんのご職業は?

 

《ホープ》

えっと、絵描きをしています

両親には内緒にしてますが...

 

《医師》

そうですか...

少々過酷かもしれませんが、しばらくは絵描き系のスキルの使用を控えた方がいいでしょう

そのスキルが一番感情エネルギーを多く使うので

 

《ホープ》

...はい、わかりました

 

 

 

―ホープは医師の指示通り、スキルの使用をなるべく控えた。絵描きにとって、絵を描く自由を奪われることは絶え間ない苦痛を背負うのと同じである―

 

 

 

《ホープ》

わたし...何もできないの?

 

ももちゃんの心の傷を治すことも...

勇気付けることも...

何もしちゃいけないの...?

 

わたしは...なんで生きてるの?

 

 

 

―ホープは自分の生きる理由が分からなくなるまでに疲弊していた。一方、うさももはというと...―

 

 

 

《うさもも》

ぐすっ......ううっ............

こわい......こわい......!

 

 

 

―うさももは外に出ること...特にあの公園に行くことがトラウマになり、部屋に一人で引きこもるようになった。うさももの両親は彼女が幼少期の頃から出稼ぎに行っているため、現在は祖父母と共に暮らしている。そんな祖父母もまた、彼女を心配していたのだ―

 

 

 

《うさもものばぁば》

心配ねぇ...

一体何があったのかちーっとも話してくれないんだもの

それに、わしらも警察から事情聴取されるなんてただ事じゃないねぇ...

 

《うさもものじぃじ》

...ん、これはっ!

なでしこや、これをみぃ!

新聞にももの名前が載っとるぞ!

 

《うさもものばぁば》

おやまぁ、たまげた!

どれどれ...

 

 

Edit News Paper 

 

少女失踪事件 捜索つづく

 

◯月◯日、メインエリアののびのび公園で13歳の少女3人の行方が分からなくなった。事件発生直後、ホープ・ダビッドソン(13)とうさもも(13)が現場で倒れているところを通行人が発見・通報した。警察は行方不明の3人を捜索しているが、未だに発見されていない。

 

 

 

《うさもものばぁば》

ももが言ってたホープちゃんって...

もしかして、あの「ダビッドソンコーポレーション」のご令嬢じゃないかい!?

 

《うさもものじぃじ》

いやはや、小綺麗な服着とると思ったらそういうことだったとは...

驚きすぎて腰が抜けるわい!

 

《うさもものばぁば》

もう...いなばさん、冗談はおよしなさいな!

それにしても、ご令嬢がなぜわしらの所によく来るのかぇ?

しかも、来る度にせんべいをいっぱい食べていくのも分からんなぁ...

 

《うさもものじぃじ》

うーむ、何か複雑な事情が...

 

 

 

 

ピンポーーン

 

 

 

 

《うさもものばぁば》

こんな時間に来客なんて珍しいねぇ...

 

は~い、ちょいとお待ちな...

 

 

 

えっ、ホープちゃん!?

こんなにやつれちゃってどうしたんだい!?

 

《ホープ》

わた、し.......わた......し.....

 

《うさもものばぁば》

ホープちゃん、とにかくあがりんさい!

今軽いものを用意するから、ね?

いなばさんっ、あれを!

 

《うさもものじぃじ》

あ、あいよっ!

 

 

 

 

―しばらくして...―

 

 

 

 

《ホープ》

急に訪ねてしまい、申し訳ありません...

 

《うさもものじぃじ》

いいんよ、いいんよ~

ところでどうしたんだい?

あんなにやつれるまでに辛いことがあったのか?

 

《ホープ》

実は...わたし、家出したんです

 

《うさもものじぃじとばぁば》

いっ、家出!?

 

《うさもものばぁば》

どうしてそんなことをしたんだい?!

今ごろ家族の人が心配して...

 

《ホープ》

...あんな人達、家族ではありません

もしあれが家族と言うなら...

わたしは家族の一員ではありません

 

《うさもものじぃじ》

そりゃ一体どういうことだね?

 

《ホープ》

...わたしは家族の誰からも愛されなかったんです

むしろ虐げられてきました、幼少期からずっと...

 

 

 

 

 

わたしは「無能な子」だと言われ、ご飯をまともに食べることすらも許されませんでした

だから、祖父の家に行ってご飯を食べていたんです

 

ところが...

祖父は数年前に帰らぬ人となってしまいました

 

それ以来、友達の家を転々と遊びに行ってはお菓子を食べて空腹をしのぐようになったんです

 

 

《うさもものばぁば》

それでうちのせんべいを...

でも、そんな生活しとったら栄養偏って苦しくないかい?

 

《ホープ》

はい...

もうさっきから変に息苦しくて...

 

《うさもものばぁば》

おやまぁ...

ホープちゃん、少しずつでいいから甘いもの食べるのをやめていこうねぇ

いな...おじいさんも甘いもの食べすぎてつらい思いしたからねぇ

 

《うさもものじぃじ》

そうだったのぉ...

ホープちゃんに血糖値言っても分からんもんなぁ...

 

《ホープ》

けっとー...ち?

 

《うさもものばぁば》

まぁとにかく!

ホープちゃん、しばらくうちにいなさい

その間におじいさんが頑張ってくれるからねぇ

 

《うさもものじぃじ》

へっ?

わしが何を頑張るんだい?

 

《うさもものばぁば》

もうっ!!

あなた、児童相談所で働いてるでしょ!?

なんとかならんのかい!

 

《うさもものじぃじ》

お、おおお落ち着けい!

そんなにすぐには行動できんよ!

慎重に進めていかねばならんからのぅ...

 

 

 

 

 

 

―こうして、ホープはうさももの祖父母の家に世話になることとなった。その間、彼女はうさももと2人で過ごすことに...―

 

 

 

 

 

《ホープ》

ももちゃん、入るよ?

 

《うさもも》

ホープ...........ちゃん?

なんで...ここに?

 

《ホープ》

ももちゃん...........

わたし、家を抜け出しちゃった

 

《うさもも》

えっ...........!?

どうして...........?

 

《ホープ》

「ダビッドソンの名に傷を付けるな」ってお父さんに怒られて、気が付いたの

 

あぁ、もうわたしは家族に愛されてないんだな...

だったら、居なくなっても変わらないよね?...って

 

 

《うさもも》

そんな...!

 

《ホープ》

ももちゃん、これは本当なの

初めて会った時のこと、覚えてる?

 

《うさもも》

確か...........幼稚園の頃......だったよね?

工場見学した後の........パーティー会場で....

 

 

 

 

 

∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧

 

 

《ホープの父》

さぁみんな!

工場見学の後は、楽しい楽しいパーティーで締めくくろうではないか!

愛しい我が子よ、あれを

 

《ホープの姉&兄》

はいお父様!!

 

 

 

 

パチンッ!

 

 

 

 

《子ども達》

うわぁ~~~っ!!!

 

《ホープの姉》

さぁさ皆さん、召し上がれ!

 

《ホープの兄》

この一時を、一生の思い出に!

 

《うさもも》

す、すごい...!

 

 

(...ん?)

(だれかにみられているような...)

 

 

∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧∧

 

 

 

《うさもも》

ホープちゃん........扉の隙間から........

覗いてた........んだよね....?

 

気になって話かけようとしたら....

 

《ホープ》

ビックリして逃げちゃったんだよね

実はあの時...わたしはそこにいちゃダメだったの

 

《うさもも》

どうして......?

 

《ホープ》

わたしは...

わたしはダメな子だったから

 

《うさもも》

なんで...?

ホープちゃんはダメな子じゃ...

 

《ホープ》

「ダメな子だから遠くにいろ」って、

家族からずっとそう言われてきたの

 

わたしがどんなに頑張っても褒めてもらえない

ごはんも食べさせてくれない

 

出てくるのはいつも冷たい手ばかり...

痛くて...怖くて...毎日泣いてたの

 

《うさもも》

ひどい...!

そんなの...家族じゃない...!

 

《ホープ》

ありがとう、ももちゃん

そう言ってくれるのはももちゃんだけだよ

 

 

わたしが小学生に上がっても参観日すら来てくれなかったから、学校だけが唯一安らげる場所だったの

 

わたしがわたしらしくいられる...

だからこそ、ももちゃんと一緒にいられるのが嬉しいの

 

《うさもも》

ホープちゃん...

 

 《ホープ》

それと...

ももちゃんには言ってなかったよね

 

 

わたしと血がつながっているのは...

おじいちゃんだけだってこと

 

《うさもも》

えっ......!?

ど、どういうこと...!?

 

《ホープ》

説明するとややこしくなるんだけど...

わたしの本当のお母さんはおじいちゃんの娘で、お父さんは今のお父さんのお兄さんなの

 

それで、本当のお父さんとお母さんは...

わたしが生まれて数ヶ月後に、事故からわたしを庇って亡くなったらしいの

だから、みんなからの当たりがキツいのは...そういうこと

 

《うさもも》

ホープちゃんの家族って...

意外と........複雑だったんだね

 

 《ホープ》

あはは...............まぁね

家族のことなんて、話すことそうそうないから

 

《うさもも》

..........................................

 

《ホープ》

あっ、もうこんな時間!?

ももちゃん、もう寝る時間だったよね?

おやすみ~、また明日ね♪

 

《うさもも》

..........うん、また明日

 

 

 

 

 

―その後、うさももの体調は日に増していくごとに悪化していった。一方、ホープは正体を隠しながらあることについて調べていた...―

 

 

 

 

 

《ホープ》

(たしかこのあたりに...あった!)

 

 

 

 

 

パラパラパラッ...

 

 

 

 

 

ドリームメイトのひみつ

「心とは」

 

心とはドリームメイトにとって最も重要な部位で、一人一人大きさや形が異なる。

直接見ることはできないが、レントゲンなどで見ることは可能。

負の感情エネルギーが侵食するとヒビが入り、二度と治ることはない。

心が砕け散ること、それはドリームメイトにとって"死"を意味する。

 

 

 

 

 

《ホープ》

(...やっぱり、心が壊れると二度と治らないんだ)

(でも...ももちゃんの心を治したい!)

(何か...何か方法は......)

 

 

 

 

 

―ホープは必死になって心を直す方法を探していた。これは全て親友...うさもものため。自分を見つけてくれた、そのお礼をするために...―

 

 

 

 

《ホープ》

(結局...見つからなかったな)

(やっぱり、治せないのかなぁ...?)

 

 

 

 

 

ただい...

 

 

 

《????》

おい、いなばのジジイ!

いるならさっさと出てきやがれ!

 

 

 

 

 

 

バンバンバンバンッ!!

 

 

 

 

 

《ホープ》

ひっ...!

 

(えっ、なになになになに!?)

(なんかすごく昔のヤンキーっぽい女の人が玄関を叩いてる...)

(あれ、ドラマだけの話だと思ってけど...)

(本当にいるんだ...)

 

 

 

 

―暴走族の風貌をした女性は、突然の来客に驚くホープを無視して玄関をこじ開けようとしている。今にも壊れそうだ...!―

 

 

 

 

《うさもものじぃじ》

プライヤっっ!!

もっと丁寧にノックできんのか!!

 

《プライヤ》

いやー、ジジイの耳遠くなったって聞いたからさー

デカい声と音だしゃ来るかと思って

 

《うさもものじぃじ》

そんなことしてなくても聞こえとるわっ!

そこまで老いぼれてないわい!

 

《プライヤ》

そうかいそうかい!

...んじゃ、いつものよろしく

 

《うさもものじぃじ》

おー、これじゃろ?

"いなばのうさせんべい"10枚入り

 

《ホープ》

(え...?)

(おせんべいを買いに来たお客さんだったの!?)

 

《プライヤ》

ジジイ、いつもわりぃな

ほい、300ドリ

 

《うさもものじぃじ》

まいどー!

 

《ホープ》

ほっ...

 

《プライヤ》

ん、誰だい?

そこで話聞いてるヤツは

 

《ホープ》

(ギクッ!!)

 

え、えっと...

 

《プライヤ》

ほーう...ボンボンの嬢ちゃんか

なんだい?

 

《ホープ》

いえっ、その...

 

《うさもものじぃじ》

これっ!

ホープちゃんを困らせるでない!

 

《プライヤ》

わーってる、わーってるよ!

んー...

 

 

 

よし決めた!

ジジイ、こいつ連れてくわ!

 

 

 

《ホープ》

えっ、なになになになに!?

 

《うさもものじぃじ》

プライヤっ!

勝手にホープちゃんを連れ回すでないっ!!

 

 

《ホープ》

きゃあああああああ~~~~っ!!!

 

 

 

 

 

 

―プライヤはホープを後ろに乗せ、豪快なエンジン音を鳴らしながらその場を去っていく。ホープは強風の中、プライヤの背中にしがみつくので精一杯だった...―

 

 

 

 

《ホープ》

あっ、あのっ!!

どこに連れていく気なんですか!?

 

《プライヤ》

あ?

"ウチ"に決まってるだろ?

 

《ホープ》

(う、ウチってまさか...アジトのこと!?)

(どどどどうしよう!このままじゃわたし...)

(わたし、殺される!?)

 

 

 

—ホープはどこに連れていかれるのか...その先を知るのはプライヤ、彼女のみである。だが、この出会いが彼女の運命を大きく変えるのである...—

 

 

 

~つづく~