20時。
あまりの痛みに
「お願い、麻酔して!って先生に言って!Σ(゚Д゚)」
と無茶なお願いを夫にした私。

冷静に考えればそんな事はできるわけはないのだが、この時の私は本気でそう思っていた。
激痛に加え、体力もどんどんなくなり、ついに視界が狭くなってきた。
なんだか真ん中しか見えない。
まわりがボヤーッと白くなって、意識も朦朧としてきた。

でもその地獄のような激痛の合間に
「もうすぐ赤ちゃんに会える!」
という想いがたまに見え隠れして、その事だけが自分を奮い立たせていた。


21時。
「あ、子宮口全開ですね!お産の準備しますね!」

と助産師さん。
え?もう産めるの?産んでいいの!?
お願いだから早くしてくれー!と思う私。

この頃には陣痛の度に「まだダメ」と言われても、体が勝手にいきんでしまう状態。
「早く産ませてー!」って感じだった。

今まではベッドでただ横になっていただけだったけど、やっと、ドラマでよく見るような、あの出産の形になった私。


そしてお医者さんたちがやってくる。
激しい陣痛がきた時にお医者さんは言った。

「陣痛が一番強い時にいきみますよー!」

マジか!( ; ゚Д゚)
痛みが強い時は力を入れて耐えたくなってしまうが、逆に力を抜いていきめと言うのか。
そんな事できるか!( ;゚皿゚)と思ったけど、やるしかなかった。

「旦那さんは頭の上に行って!いきむ時に枕を持ち上げてあげて!」
と夫が言われていた。
今まで横で手を握っていた夫が私の視界から消え、「頑張れ!」という声だけが頭の方から響く。

そして、強い陣痛がきた。
最初はコツがつかめず、なんだか不発。
だが、1回の陣痛でいきめるのは2回と分かった。
なんとか回数少な目で産みたい!
もはや陣痛の激痛に耐える体力もあまり残っていない事が自分でも分かっていたから。
そんな時にパシャーっと大量の水が出る感覚。

「破水したからねー!」というお医者さんの声が遠くで聞こえた。
これが噂の破水か。と思いながら、

次は爆発的な力で産み落としてやる!!と思った。


そして次の陣痛。
全身の力を全て込めたけど、まだ生まれなかった。でも

「あ!もう頭出てるよ!もう少し!!」

というお医者さんたちの声。


「次で絶対決めてやる!」と私は思った。


3回目の陣痛。
思いっきりいきんだ。
子宮から「かめはめ波」でも出るんじゃないかってくらい力を込めた。


そして、そのかめはめ波と共に赤ちゃんが飛び出したのが分かった。

「生まれた!生まれたよ!!」
と夫が叫んだ。

6回いきんだところで、我が子は飛び出してきてくれた。


同時に顔に水が垂れてきた。
何かと思ったら夫の涙だった。

私も赤ちゃんが生まれた瞬間は感動して泣くと思っていたけれど、それよりも苦しみから解放されたという方が大きくて泣けなかった(苦笑)



時間は23時になろうとしていた。