うり坊           



僕は現在、空港でガードマンをしています。



経験しているからこそ言えますが、

警備員の社会的地位は非常に低い、と感じる時があります。

空港で働く他の職員から時々差別的扱いを受けることも

一度や二度ではありません。



先日のことですが、

僕ら社員は、空港内でいつ旅客が倒れても対処できるようにと

みな救急法を学んでいます。


AED(自動体外式除細動器)の操作法から、

心肺蘇生法、急患のもっとも速い搬送ルートなどについて 

よく勉強し日頃から訓練しています。



ところが、いざ急患が発生し(ほぼ1日1件の割合で発生します)

AEDを所持して 現場に駆けつけても

エアラインの職員などは警備員にはとても冷たいものです。


あからさまに、「警備員が何の用だ」といわんばかりの態度の方や

「邪魔だよ」

とまで言ってくる航空会社の地上職員までいます。

しかも彼らは救急法など知らないのに、です。



彼らのように相手の職業などによって態度が変わる人間は

警察官や税関の職員がやってくると、いきなり態度が変わってしまいます。


警備員には大きな態度でも、国家権力には非常に協力的です。



パイロットの中には 傲慢な人も多く

歩いていたら後ろから肩をぶつけられたこともありました。

邪魔だと言わんばかりの態度で、

「おれは日○航空の〇〇だ、お前の名前は!」と言われました。



特にJ○Lのパイロットや職員は平均的に態度が悪い人が多く、

こう言っては失礼ですが、

事故・事案を起こすことが多いのは何やら理解できる気がします。

社員の人間性を高める教育が あまりされていない感じがしますから。


こちらから挨拶をしても、返してこない人が多いです。

どうしてそういう人たちがサービス業をしているのか・・・

わかりません。



ところで、僕はもともと好きで警備員になったわけではありません。



以前は、モスバーガーのチェーン店で店長をしていました。

ところがそのチェーン店の社長が新し物好きで

次々と違う業種に手をだしては失敗し、給料も賞与も上がらず

これでは家族を養えないと考え、

ちょうど求人広告にでていた某警備会社に就職し、空港に配属されたのです。



どこの会社も同じかもしれませんが

上司といえども我々部下の味方をしてはくれません。


以前こんなことがありました・・・

レストランでお客さんが倒れたと聞き、僕らは急いで駆けつけました。

すると、そこにはすでに空港クリニックの看護士さん(女性)が到着していて、

患者の介護をしていました。


僕は、救急車の手配をすべきかどうか判断するために

患者の状態や持病などを看護士に尋ねたところ、彼女は


「個人情報がありますから、私は何も言いません。

 個人情報ですから、あなた方に言う必要はありません!」

と答えました。


僕が 「ですが、個人の生命・身体など緊急の場合には個人情報保護の除外規定がありますから問題はありません。教えてください」


と言うと、むっとした顔で黙っているので

こちらも患者が心配で少し頭にきてしまい

「急いでください。早く教えて下さい!」

と言ったら、あとでクレームとなりました・・・


上司に呼ばれ、

「クリニックの看護婦さんからクレームがきたぞ!余計なことを言うな!」

と、怒鳴られました。


禁煙の場所でタバコを吸っていた空港職員に注意したら、

その迷惑行為者が事務所にえらい剣幕で乗り込んできて 

僕に謝罪を求めて大騒ぎになりました。

そのときは結局、

「謝れ!」 

と上司から無理やり頭を下げさせられました。

こっちは正しいことを言っているにもかかわらず、です。


こちらが謝ったとたん、その迷惑行為をした職員は涼しい顔で

「いや~私もいつも禁煙場所でタバコ吸ってて

 みなさんには迷惑かけてんですよ~」

と、あ然とする上司を尻目に、笑いながら去っていきました。



彼は常習犯で、

いつも我々の前でタバコを吸っているのを上司は知らなかったのです。

注意したとたん、タバコを投げつけられた同僚や

制帽を掴んで投げ捨てられた同僚もいました。

いい歳にもかかわらず、僕はその後 あまりの悔しさに

不覚にも涙を流してしまいました・・・(ノ_・。)


警備員は社会的地位が本当に弱い、とあらためて感じました。

社会的地位の低さゆえに、上司もクレームには神経過敏です。

契約先に対してもいつも恐縮しています。


僕の会社の企業理念に 「正しさの追求」 というものがあります。



入社当時、上司から
「正しいと思ったことは、我々上のものに対しても、どんどん言ってきてくれ」

と言われたので、正直に 上司に思ったこと、

業務で改善すべきことを話したら

嫌われてしまい、その後出世できなくなりました。


出世していくには 上司のくだらない冗談に笑い

何事もYESマンでなくてはならないのです。

上の者を見つけたら、

「部長、おはようございます!」

などと、元気よく挨拶しなくては出世できないのです。


しかし、そういう者は 上にはこびへつらうものの下の者には傲慢です。

現場では、企業理念なんて 形だけなのだなぁ・・・とわかりました。


みんな、警備員という職業にはうんざりしていますが、

じゃあ他に何かやりたいことがあるのか といったら

特にやりたいこともないのです。


僕も4年前までは、宝くじが当たるのをただ待っているだけの

不平不満だらけの 本当にやる気のない人間でした。


でもいつしか、

  もっとやりがいのある仕事がしたい・・・

  社会的に意義のある、人から尊敬される仕事がしたい・・・

  実際に困っている誰かの役に立つ仕事がしたい・・・

と強く思うようになっていきました。



では一体自分に何ができるのか・・・・

考えても わかりませんでした。



しかしある日、僕の人生を左右することになる

衝撃的な記事を新聞でみつけたのでした。

あの記事を読まなければ

僕は今でも運まかせの人生を歩んでいたかもしれません。





         チューリップ赤