見ているようで、必ず見逃してしまう話があります。

 例えば、連続ドラマで、1話見逃してしまった。それが再放送されることがあったのに、またしても見逃してしまう。その後、何度再放送しても、なぜか見逃してしまう……みたいな。

 私の場合はそうではないのですが、ドラえもんにこういう話があるのは見逃していました。

 それは、「ゾウとおじさん」と題された話です。

ぼく、ドラえもんでした。涙と笑いの26年うちあけ話 現在、図書館から借りている、先代ドラえもん声優の大山のぶ代さんの『ぼく、ドラえもんでした。涙と笑いの26年うちあけ話』(2006年、小学館、1,575円税込)を読んでいるのですが、その中で触れられていたのです。

 ところで、こうして大好評をいただいている劇場用映画のほかにも、ドラえもんは良い作品をたくさん世に送り出してきました。

 なかでも「ゾウとおじさん」はとくに私の好きな、心にじーんと響く作品です。

 これは一九八〇年のテレビの特番で放送された中編で、のび太くんが叔父さんから、戦争中の動物園の話を聞くことから始まります。食糧難時代で、ゾウが空襲の時にあばれたりしては危ないから、と死なせることになります。

 でも、お利口なゾウは毒を入れた食べ物にすぐ気がつき、食べないので、とうとう餓死させてしまう、というのです。のび太くんは、かわいそうだ!とドラえもんと相談して、タイムマシンでその動物園へ行き、ゾウをスモールライトで小さくし、「ゆうびんロケット」に入れてインドのジャングルに送って助けてあげるのです。

 この“かわいそうなゾウ”の物語は当時小学四年生の教科書にも載っていたので、日本中の子どもたちはゾウを助けたドラえもんに拍手を送ってくれました。

 この話は、「63回目の終戦の日に「かわいそうなぞう」と「キクちゃんとオオカミ」」でも書きました、秋山ちえ子さんの朗読でもおなじみの「かわいそうなぞう」を下敷きに、ドラえもんの一編として藤子F不二雄先生が描かれたものを原作としたアニメ作品なんですね。

 初回放送は1980年1月3日。実は、この「ゾウとおじさん」は評判がよく、何度か再放送もされていたとか。

 なのに、見逃しているとは。

 でも大丈夫。

ドラえもんコレクションスペシャル 冬の3 この作品は、DVD『ドラえもんコレクションスペシャル 冬の3』に収録されているのです。ちなみに、このDVDには、「天井うらの宇宙戦争」(1981年1月1日放送)、「のび太の宝さがし」(1982年1月3日放送)、「ハツメイカーで大発見」(1982年1月1日放送)も収録されています。

 しかし、「このお話、最近見たことがあるなぁ」という気がした人もいるかもしれません。

 実は、現在放送されている「水田わさび版ドラえもん」でも、アニメ化されているのです。

 2007年8月10日に夏休み特別企画として「第186話 ぞうとおじさん」が放送されているのです。

 私は、これも見逃してました。

 残念なことに、これはDVD化されていないようですが、こそっとこちらから見られたりします。(できればDVD化して欲しいと願っています)




 いわば「ドラえもん版・かわいそうなぞう」。

 今の子どもたちにも、このメッセージは通じるでしょうか。

 なお、「ぞうとおじさん」の原作は、以下のコミックスに収録されています。

ドラえもん (5) (てんとう虫コミックス) (新書)ドラえもん (感動編) (小学館コロコロ文庫) (文庫)

 そして、やはり秋山ちえ子さんの朗読も、改めて聞きたいものです。

かわいそうなぞう