裁判官が日本を滅ぼす (新潮文庫) 日本でも裁判員制度が導入されることになり、我々一般市民が裁判に関わることになる時代が、もうまもなくやってきます。これにはいろいろ異論もありますが、いいことなのかもしれません。というのも、判決を下す立場にある裁判官に、人としての感性をなくしている人が多くいるからです。

 門田隆将氏の『裁判官が日本を滅ぼす』(新潮文庫)は、実に衝撃的な内容です。

 普通、裁判所というものは、物の善悪を証拠を積み重ねて検証し、そして正義の判断を下すもの――そう思っている人が多いはずです。しかし、ここで紹介される事例を見ると、とてもそんなことは思えなくなるのです。しかも、ここで紹介されているのは、特殊な事例ではありません。誰もが巻き込まれてしまうかもしれないもの、そして大きく報道された事件の“意外なその後”が紹介されています。

 「犯人が消えてなくなった仰天判決」――これは、1993年に発生した「山形マット死事件」で、2002年に出された判決。私からしてもとても信じられない判決です。その他にも、様々な事例が挙げられていて、にわかには信じ難いことですが、これが現実なのです。

 裁判では、検察側と弁護側で様々な論拠が示され、最終的にそれらから裁判官が判決を下します。その、検察側と弁護側にも、様々な立場から行う人がいます。

 例えば、いまだに裁判が続く、光市母子殺人事件。この裁判のことも、本書には記されていて、とんでもない裁判官の実体が書かれています。いまではこれが、トンデモ弁護団によって変なほうへと向けられているのはご存じの通り。

裁判長!ここは懲役4年でどうすか (文春文庫) また、本書を読んだ後に、北尾トロ氏の『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』(文春文庫)も読みましたが、こちらは一般の人が裁判を傍聴するという体験記で、なかなか興味深かったですね。

 とにかく、いまの司法というものがどうなってしまっているのか。もし、判例主義でしかないのならば、裁判官なんて存在は不要ではないかとさえ思います。だって、過去の判例や法律をぶち込んだコンピュータへ、積み上げた証拠を入力し、判決を出力すればいいだけの話。なぜ、血の通った人間が裁判官として判決を下すのか。いま一度考え直してもらいたいですね、特に現職裁判官の皆さんには。

HERO DVD-BOX リニューアルパッケージ版 そういえば、もうすぐ木村拓哉主演の映画『HERO』が公開されるようですが、ここで登場する木村拓哉演じるところの検事・久利生公平の原点といえば、和久峻三作の人気シリーズ「赤かぶ検事」こと柊茂ではないでしょうか。そして、いまの裁判所に必要なのは、赤かぶ検事のような人間ではないだろうかと考えます。もし、人間本意で物を考える裁判官が多いならば、『裁判官が日本を滅ぼす』に記されたような事例は起きずにすんだかもしれません。

 昨年、この赤かぶ検事シリーズをフランキー堺主演でドラマ化した『赤かぶ検事奮戦記』の第1・2シリーズがDVD化されました。こんな時代だからこそ、ぜひ多くの人に見てもらいたいなと思います。お店で取り寄せもできますし、ネット通販でも購入できます。中身はいまから25年以上前の作品ですが、裁判の本質は変わっていません。

 そして、裁判員制度がスタートする前に、いろいろ考えて欲しいなと思います。

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