私たちは精神世界からやって来て、この世に誕生します。

誕生とは、物質化ということです。

誕生し、肉体を得て、私たちの精神は物質化していくのです。

はじめは物質化に慣れていません。

ですから、赤ちゃんは、自分の手を発見して喜びます。

手をひらひらと動かして、自分の手が、自分の思う通りに動くことに驚くのです。

物質化に慣れるまでは、より精神世界の印象を保ち続けています。

しかし、物質化に慣れるにつれて、精神世界の印象は薄れて、ついには消えてしまいます。

ですから、精神世界の印象の残骸が最後のひとかけ残っている、ちょうど話し始めたばかりの頃に、精神世界の様子を聞くと、生まれる前の記憶を話すのです。

そして、よりしっかりと、地上に降りて、物質化し、物質世界に慣れていきます。

それが外から見ると、「子どもが成長した」「大人になる」というプロセスなのです。

では、老化とは何でしょうか？

ちょうど、その反対なのです。

つまり、物質世界、肉体の世界から離れようとするのです。その一方で、精神世界に近づいていくのです。

老化によって、私たちは肉体機能を次第に失っていきます。

感覚が鈍り、地上生活で生きることが次第にしんどさを増します。

それは一面では衰退ですが、一面では地上生活、物質世界からの解放でもあるのです。

この地上世界から解放されて、私たちは霊的世界へ、精神世界へと向かい始めていくのです。

それは故郷への帰還でもあるのです。

地上生活と精神生活の比重が、幼い頃は2：8位から次第に成長し、5：5に、さらに8：2になっていきます。

すると、次には逆転して、衰退がはじまり、また5：5へ、さらに2：8へと戻っていくのです。

物質世界だけの割合を評価するから、衰退と見えるのですが、精神世界ではむしろ成長していくのです。

このプロセスが、地上生活だけの推移ではなく、地上世界と霊界との行き来ととらえると、衰退することの「意義」が見えてくるのです。

たとえば、バラの花を見るならば、バラが成長の過程を経て、きれいに花を咲かせます。

これが地上的な成長のピークと言えるでしょう。

次第に花がしおれ始め、花を落とし、やがては枯れていきます。

ところが、それは植物にとって、悲劇でもなんでもない、自然のプロセスです。

しかし、人間だけが、老化を恐れ、衰退を悲しみ、少しでも若くいたいと願うのは何故でしょうか？

それは地上的なものだけを見るからなのです。

全てを地上的なレベルで判断しているから衰退していると見えるだけです。

肉体が老化して、感覚が衰え、不自由になっていくのではなく、肉体というものに縛られ、感覚というものに縛られていた段階から自由になっていくのです。

肉体から解放される分、精神は自由を得るのです。

老化と精神の自由