ジッタリン・ジンの『夏祭り』という曲を聞いて思い付いた話。
一応歌詞に沿った話になってます。
桐生ちゃんに殴られる覚悟で‥www
「龍司さん、お待たせ!」
そう言いながら小走りでワシに近付いてきた嬢ちゃんは、いつもおろしている髪を今日は頭のてっぺんで団子にしとる。
来る前に風呂でも入ってきたんやろう、仄かにシャンプーの匂いがする。
「お、おぅ‥」
初めて見る嬢ちゃんの浴衣姿に、何や気恥ずかしゅうなってワシは顔をそらした。
「‥‥?浴衣、似合わないかな?」
「そっ、そんな事あらへん!よう‥似合うとるで‥」
「うふふ。ありがとう!」
何や、変にドキドキしてきよった。
「ほ、ほな、行こか」
「うん!」
ワシはこの妙な胸の高鳴りを『祭のせい』っちゅう事にして、嬢ちゃんと二人祭会場へ足を踏み入れた。
「人、多いね‥」
「そやなぁ。嬢ちゃん、迷子になったらあかんで?」
そう言うてまた足を進めようとしたワシを、嬢ちゃんは呼び止めた。
「手、繋いでいい?」
「‥何やて?」
「だから、迷子にならないように手、繋いでていい?」
無垢な笑顔で手を差し出す嬢ちゃん。
(桐生、すまん‥!)
ワシは心の中でそう呟いて嬢ちゃんの手をとった。
せやけど、流石にこんなとこを誰か知っとるモンに見られたらまずいやろ思て、ワシは嬢ちゃんの手を少し少しきつく握ってそのまま自分のジャケットのポケットの中に突っ込んだ。
「‥離さないでね?」
小さくそう言うた嬢ちゃんに首だけで返事をし、ワシらはまた歩を進めた。
祭会場は相変わらず人が多く、賑わっていた。
どこからまわろか?なんて嬢ちゃんと話しながら歩いとったら不意に立ち止まってワシの手をぐいと引く。
「ねぇ龍司さん!金魚すくいしようよ!」
「金魚すくい?」
「うん!私と龍司さん、どっちが沢山すくえるか勝負しよ!」
「ふっ‥ええで。臨むところや」
ワシがそう言うと嬢ちゃんはパアッと顔中笑顔で溢れさせて金魚すくいの屋台へ走って行った。
「負けないんだからね!」何て言いながらワシにポイを渡してくる嬢ちゃんはやる気満々といった感じで。
こらちょっと手加減したったほうがええやろか?
時々「もぅ!」やら「キャッ」やら声を上げながら金魚すくう嬢ちゃんの横顔はとても無邪気で可愛くて。
ふふっ‥夢中になりすぎて袖濡れとるがな。
中学生いうてもまだまだ子供やのぅ‥
そんな事を考えながら金魚すくうてたらワシのポイは呆気なく破れてしもた。
結局勝負は嬢ちゃんの勝ち。
売られた喧嘩に負けるなんぞ癪にさわったが、たまにはこんなんもええかと思った。
金魚すくいを終えてまた会場内をぶらぶらしとったらどこからともなく甘い匂いがしてきて、辺りを見回すと綿菓子の屋台があった。
「いい匂~い!」
キラキラ目を輝かせてそう言う嬢ちゃんを見てたら、ワシの足は自然と綿菓子の屋台へと向いていた。
出来立ての、まだ少し温かい綿菓子を頬張る嬢ちゃんの笑顔は綿菓子同様ふわふわしとって、心がくすぐられるようや。
「――!」
不意に耳に入ってきた聞き覚えのある声にワシは思わず体をびくつかせた。
「秋山さーん!あっちにタコ焼きの屋台ありましたよ!!」
「えっ!?花ちゃんまだ食べるの!?」
金貸しとその秘書の子か‥
こらまずいな‥
ワシは嬢ちゃんがおる事も忘れて早足でその場から離れた。
幸い嬢ちゃんもあいつらに気付いとったみたいで、何も言わんと少し距離開けてワシの後ついて来よった。
「すまんかったな‥」
「ううん!平気だよ‥!」
そう言うたものの、嬢ちゃんの顔は若干複雑そうやった。
一通り屋台を見て回ったワシらは、会場近くの神社で一休みする事にした。
神社の中は薄暗く、祭の雑踏は少し遠くに聞こえる。
ワシらは石段に腰掛け他愛もない話をして歩き疲れた体を休めた。
「そうだ!」
何かを思い出したらしい嬢ちゃんがいきなり立ち上がる。
「龍司さん、線香花火しようよ!」
「線香花火ぃ?」
「そんなもんどこにあるんや」と聞くより早く嬢ちゃんは浴衣と同じ生地で作られた巾着の中から線香花火の袋を取り出した。
「来る時に買ってきたの!龍司さんと一緒にしようと思って!」
そう言って笑う嬢ちゃんが急に難しい顔になりよった。
時折小首を傾げ、「あれ?おかしいなぁ‥」何て言いながら巾着を覗き込み何かを探しとる。
暫くして嬢ちゃんは少し恥ずかしそうにライターを忘れた事をワシに打ち明けた。
「ライターならワシが持っとる」
まぁそんな事やろうと思っとったわ。
線香花火なんかするんどれぐらいぶりやろか?
パチパチと音をたて弾け、ぽとりと落ちるそれは懐かしいような切ないような、そんな気がした。
「なぁ嬢ちゃん‥」
「え?」
不意にワシが声かけたさかい、嬢ちゃんも少し驚いたようや。
せやけどワシは弾けて落ちる線香花火から目離さんと続けた。
「もうじき沖縄に帰るんか?」
「‥‥うん」
「そうか‥」
きっと嬢ちゃん、今物凄い切ない顔しとるんやろな‥
火種が落ちてもう消えてしまった線香花火を今も尚ただぼーっと見つめているワシには嬢ちゃんの表情を確認する勇気も術もない。
どうしたもんかと思案していると、遠くの方で打ち上げ花火の音が響いた。
線香花火のそれとはまた違う、勢いよく弾けるその音と光につられるようにしてワシと嬢ちゃんは顔を上げた。
「わぁ‥」
「ほぉ‥」
会場からは大分離れたとこにおるのに、視界に納まりきらん程の鮮やかな光。
「なぁ‥遥‥」
「ん‥」
『お前が好きや』
なんかとても言えんが‥
「また来年も、こうやって一緒に祭来たいのぅ‥」
「‥うん!」
今度はワシが会いに行くわ‥
もちろん桐生には内緒でな。
★Fin★
一応歌詞に沿った話になってます。
桐生ちゃんに殴られる覚悟で‥www
「龍司さん、お待たせ!」
そう言いながら小走りでワシに近付いてきた嬢ちゃんは、いつもおろしている髪を今日は頭のてっぺんで団子にしとる。
来る前に風呂でも入ってきたんやろう、仄かにシャンプーの匂いがする。
「お、おぅ‥」
初めて見る嬢ちゃんの浴衣姿に、何や気恥ずかしゅうなってワシは顔をそらした。
「‥‥?浴衣、似合わないかな?」
「そっ、そんな事あらへん!よう‥似合うとるで‥」
「うふふ。ありがとう!」
何や、変にドキドキしてきよった。
「ほ、ほな、行こか」
「うん!」
ワシはこの妙な胸の高鳴りを『祭のせい』っちゅう事にして、嬢ちゃんと二人祭会場へ足を踏み入れた。
「人、多いね‥」
「そやなぁ。嬢ちゃん、迷子になったらあかんで?」
そう言うてまた足を進めようとしたワシを、嬢ちゃんは呼び止めた。
「手、繋いでいい?」
「‥何やて?」
「だから、迷子にならないように手、繋いでていい?」
無垢な笑顔で手を差し出す嬢ちゃん。
(桐生、すまん‥!)
ワシは心の中でそう呟いて嬢ちゃんの手をとった。
せやけど、流石にこんなとこを誰か知っとるモンに見られたらまずいやろ思て、ワシは嬢ちゃんの手を少し少しきつく握ってそのまま自分のジャケットのポケットの中に突っ込んだ。
「‥離さないでね?」
小さくそう言うた嬢ちゃんに首だけで返事をし、ワシらはまた歩を進めた。
祭会場は相変わらず人が多く、賑わっていた。
どこからまわろか?なんて嬢ちゃんと話しながら歩いとったら不意に立ち止まってワシの手をぐいと引く。
「ねぇ龍司さん!金魚すくいしようよ!」
「金魚すくい?」
「うん!私と龍司さん、どっちが沢山すくえるか勝負しよ!」
「ふっ‥ええで。臨むところや」
ワシがそう言うと嬢ちゃんはパアッと顔中笑顔で溢れさせて金魚すくいの屋台へ走って行った。
「負けないんだからね!」何て言いながらワシにポイを渡してくる嬢ちゃんはやる気満々といった感じで。
こらちょっと手加減したったほうがええやろか?
時々「もぅ!」やら「キャッ」やら声を上げながら金魚すくう嬢ちゃんの横顔はとても無邪気で可愛くて。
ふふっ‥夢中になりすぎて袖濡れとるがな。
中学生いうてもまだまだ子供やのぅ‥
そんな事を考えながら金魚すくうてたらワシのポイは呆気なく破れてしもた。
結局勝負は嬢ちゃんの勝ち。
売られた喧嘩に負けるなんぞ癪にさわったが、たまにはこんなんもええかと思った。
金魚すくいを終えてまた会場内をぶらぶらしとったらどこからともなく甘い匂いがしてきて、辺りを見回すと綿菓子の屋台があった。
「いい匂~い!」
キラキラ目を輝かせてそう言う嬢ちゃんを見てたら、ワシの足は自然と綿菓子の屋台へと向いていた。
出来立ての、まだ少し温かい綿菓子を頬張る嬢ちゃんの笑顔は綿菓子同様ふわふわしとって、心がくすぐられるようや。
「――!」
不意に耳に入ってきた聞き覚えのある声にワシは思わず体をびくつかせた。
「秋山さーん!あっちにタコ焼きの屋台ありましたよ!!」
「えっ!?花ちゃんまだ食べるの!?」
金貸しとその秘書の子か‥
こらまずいな‥
ワシは嬢ちゃんがおる事も忘れて早足でその場から離れた。
幸い嬢ちゃんもあいつらに気付いとったみたいで、何も言わんと少し距離開けてワシの後ついて来よった。
「すまんかったな‥」
「ううん!平気だよ‥!」
そう言うたものの、嬢ちゃんの顔は若干複雑そうやった。
一通り屋台を見て回ったワシらは、会場近くの神社で一休みする事にした。
神社の中は薄暗く、祭の雑踏は少し遠くに聞こえる。
ワシらは石段に腰掛け他愛もない話をして歩き疲れた体を休めた。
「そうだ!」
何かを思い出したらしい嬢ちゃんがいきなり立ち上がる。
「龍司さん、線香花火しようよ!」
「線香花火ぃ?」
「そんなもんどこにあるんや」と聞くより早く嬢ちゃんは浴衣と同じ生地で作られた巾着の中から線香花火の袋を取り出した。
「来る時に買ってきたの!龍司さんと一緒にしようと思って!」
そう言って笑う嬢ちゃんが急に難しい顔になりよった。
時折小首を傾げ、「あれ?おかしいなぁ‥」何て言いながら巾着を覗き込み何かを探しとる。
暫くして嬢ちゃんは少し恥ずかしそうにライターを忘れた事をワシに打ち明けた。
「ライターならワシが持っとる」
まぁそんな事やろうと思っとったわ。
線香花火なんかするんどれぐらいぶりやろか?
パチパチと音をたて弾け、ぽとりと落ちるそれは懐かしいような切ないような、そんな気がした。
「なぁ嬢ちゃん‥」
「え?」
不意にワシが声かけたさかい、嬢ちゃんも少し驚いたようや。
せやけどワシは弾けて落ちる線香花火から目離さんと続けた。
「もうじき沖縄に帰るんか?」
「‥‥うん」
「そうか‥」
きっと嬢ちゃん、今物凄い切ない顔しとるんやろな‥
火種が落ちてもう消えてしまった線香花火を今も尚ただぼーっと見つめているワシには嬢ちゃんの表情を確認する勇気も術もない。
どうしたもんかと思案していると、遠くの方で打ち上げ花火の音が響いた。
線香花火のそれとはまた違う、勢いよく弾けるその音と光につられるようにしてワシと嬢ちゃんは顔を上げた。
「わぁ‥」
「ほぉ‥」
会場からは大分離れたとこにおるのに、視界に納まりきらん程の鮮やかな光。
「なぁ‥遥‥」
「ん‥」
『お前が好きや』
なんかとても言えんが‥
「また来年も、こうやって一緒に祭来たいのぅ‥」
「‥うん!」
今度はワシが会いに行くわ‥
もちろん桐生には内緒でな。
★Fin★






