私の実家は築20数年ほどなのだが、2階に今は使っていない、物置と化した和室がある。
小さい頃は、一家全員が2階の3部屋でそれぞれベッドがあって寝ていたのだが、とある日から・・・私が小学校高学年くらいから父と母が1階の広い和室で寝るようになってしまった。
理由は・・・母の金縛り。
そんなことはあるわけない、と、父は言うのだが、どうしても母が譲らずに下の階を寝室にしてしまった。
小さい私はそんな理由があったとは知るよしもなく、高校3年まで2階の問題部屋の隣の部屋で勉強も読書も就寝もしていた。
高校3年生のある夜、なぜかその当時飼っていたキジトラ柄の猫が「フーーーッ!」と毛を逆立てていた。寝ていた私はその猫の威嚇している声でなんとなく起きた・・・が、目が開けられない。身体が重い。誰かがわたしの胸に乗っかている感じがする!そして
「・・・ぅ・・・すぅん・・・ひっ・・・」
女性のすすり泣くような声が、どこからか聞こえる気がした。
これはやばい!と、咄嗟にありとあらゆるお経のようなものを思い浮かべて(口が動かないので思い浮かべてみた)必至に脚の親指を突っ張って身体を動かそうとした。
ふ・・・・・っと、身体が軽くなって目を開けることができた。その時、猫は問題の部屋の方をじっと見ていた。
さすがに怖くなって、猫を連れて一目散に両親の寝室に駆け込んだら、夜中の2時過ぎだというのに母が起きていた。
「あれ、聞こえたんでしょ?」
ゾーーーーっとした。
母にも聞こえていたらしい。それ以上母は何も語ってはくれなかったが、怖いのでとりあえずしばらくは両親と一緒に寝ていた。
金縛りはそれ以来、何度もあったし、すすり泣きのような声も何度か聞こえてはいたが、害がないので放っておいた(苦笑)そして数週間後に私は専門学校入学のため上京。アノ部屋はいつの間にか物置部屋に。
今では、夜に一人でアノ部屋に入る勇気はないが、一体何だったのか、気になる今日この頃であります。