花火屑

花火屑

本当に良いものはいつになっても色褪せない

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黒い蛇/
柊治郎
廣済堂出版


¥1,785
Amazon.co.jp
★★★★☆

初めて読む作家さんです。図書館でふらーっと見つけて手に取りました。
読書メーターみても読んでる人が少なくて、どういう話か分からないまま読んだけど、存外面白くて思わぬ拾いものでした。

著者紹介をみると、著者は本物の元外事捜査官だそうで。
本物だけが書けるリアリティー、と言うのが本書の売りだそうです。
長編だと思ってたら短編五編の書き下ろしでした。いやー、最初の一作があんまり重厚な感じだったからてっきり長編だと思ってしまったわ。


【イミテーション】
上層部への上申書提出で犯人逮捕は出来たものの、組織に逆らった刑事に先はない。
依願退職の形で刑事を辞め、細々とその日暮らしをしながらとりつかれたように険しい山に登り続けていた。
剣岳に挑もうと麓の駅に着いたとき、どこか見覚えのあるような老人に声をかけられた。


【黒い蛇】
表題作。朝鮮人女性と結婚し思わぬ協力者を得て、本庁へ引き抜かれた。
異例の大抜擢だ。それをよく思わない先輩もいる。
ある時、朝鮮人妻が忽然といなくなり、初めて出会った山の登山口で姿を見かけたという情報を得、向かってみると…。


【部外秘】
警察には公式に秘密にする文書と、暗黙の了解的に内々で示し合わせて秘匿する文書と、2種類の区分けが存在する。
あるとき、その文書がどこからか漏れていることに気づいた公安部は、文書を制作した男をマークすることに。そしてある時、8人の男たちが集い"IPA"なる組織の話をしている現場を押さえた。


【微罪処分】
不祥事を起こして警察を辞め、ドラッグストアの警備担当になった。
こういった店では、組織的な強盗とも呼べる万引きが多発しており、1回で100万円単位の万引きも珍しくなかった。
大口の万引きを止められないなら、警備を別の人間に交換すると店長に小言を言われる毎日。
そんなとき、万引きが起こる時に印が出ていることに気づいた。


【不定期刑】
少年法の為、重大な殺人を犯した少年は2年で刑務所から出所した。
少年に反省の色はなく、19歳の不良が21歳の不良になっただけであった。
犯人逮捕時に現場にいた子供を殺してしまい、刑事を首になって探偵事務所に勤めていた男に、同様に警察を辞めた同期から「2年で出所した不良を殺して欲しい」という依頼があったことを持ちかけられた。



どれもすごく重い感じの話で、主人公はそれぞれ違うんだけど、みんなが何らかの理由で警察を辞めていてその日暮らしの苦しい生活をしています。
一体どうしてここまで主人公たちの背景が同じなのかしら??
もしかして、作者も何か理由があって警察を辞めたのかもね。

あまりにも一つ一つがしっかりしてるので、一つを読み終えて次に行くのに心の準備というか、内容をリセットして次に行くのに時間がかかっちゃうんだなー。
そのくらい短編とは思えない読み応えのある話ばかりでした。

今度はこの人の長編が読みたいと、密かに探しているのであります…。
高原のフーダニット/
有栖川有栖
徳間書店


¥1,680
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★★★☆☆


火村&アリスシリーズももう二〇年になるのだとか。
長編よりも短編での登場が多いそうですが、それにしても長いことやってるんだわねー。読者の中にはいつの間にか火村先生の年齢を追い越しちゃった!なんて人もいるんだろうな~。
私もそのうち…。

短編というか中編集ですね。三話収録です。


【オノコロ島ラプソティ】
休暇中の火村先生、淡路島に行ったはいいものの島で殺人事件が発生。警察の捜査に巻き込まれてしまう。
ちょうどネタに困ってうなっていたアリスは、知らせを聞いて一人淡路島へ。

事情聴取を受けていたのは年老いた元警察官。
容疑者と思われる男と、殺害時刻に酒を飲み交わしていたという。
頑固で正直者、世捨て人のような男は本当に容疑者と酒を飲んでいたのか。


【ミステリ夢十夜】
こんな夢を見た。
で始まる、アリスの不思議な夢日記。
夢の中で「最近おかしな夢を見るんです」って相談してるアリスがかわいいです。


【高原のフーダニット】
閉鎖的な村で殺人が起こった。
以前に火村が事件で関わった双子の兄が電話してきたのだ。
「双子の弟を殺してしまった…」


今作はなんつーか、事件の真相解明を証言の真偽に頼ったものばかり。
その証言は嘘なのかどうか、後は状況証拠とか。
それでいいのかー?って感じの流れだった。


Fake/
幻冬舎
五十嵐貴久


¥1,785
Amazon.co.jp

★★★☆☆


最近はこの人の著作を読むことが多くなった。
特に何が好きって訳でもないんだけど、手に取りやすい内容の重さって感じかな。



独立して探偵事務所を立ち上げて四年。
妙な依頼が舞い込んできた。
「どうか私の息子を大学に合格させて欲しい」

何年か前、懇意にしていた叔父の息子が大学へ行きたいと言い出した。彼は素行が悪くこれまでほとんど学校に行っていなかった。
とうてい大学に入れる学力はないが、叔父は息子はこれを逃したら人生をやり直せないだろうと、センター試験通過の依頼をしてきた。
「手がないわけではない」
と、請け負った宮本は策を講じて彼を大学へ入れた。

この話を知って、自分の息子もと話を持ちかけてきた「西村」と言う男。
気は進まない者の、あまりのしつこさに渋々請け負うことになった。


↑ここまでの話は完全に前振りなんだよね。
この前振りがもうなんつーか、なげーし!!!

元探偵の宮本は自称機械工学に強く、その知識と技術を駆使してセンター試験を突破させるんだけど。
そこには陰謀というか、別の大物が企む計画があったわけですね。
そのせいで、関わった人物たちの人生が台無しになっちゃった。こんなのくやしーじゃないか!!!!

ということで、その大物を同じようにペテンにかけて、10億円をせしめようって話です。
前述の通り前振りが長い!! 私の説明の前振りも長くなっちゃったじゃないか!

でも、読んでて「ホントーにこんな方法で10億もせしめられるの??」という計画の内容。
こりゃー作中人物も不安になるよねー。
だってホントワンパターンだし。

でも最後にどんでん返しというか、ある意味想像道理というかの結末で、まー良いでしょう。
っと溜飲が下がるのでした。

このチームの紅一点、加奈の出生に関しての話が随所にちりばめられてるけど、あんまり話には関係ないというか、どうしてこんな不幸な事にしちゃったのか謎。
潜行捜査 一対一〇〇/
双葉社
安東能明


¥1,575
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★★★☆☆


久し振りの読んだわ、この人の著作。
以前タイトルだけが気に入って読んだ「ポセイドンの涙 」が思いの外面白かった記憶があって、他の著作も読んでみようと、積読リストに長い間入ってました。
図書館でちょうど見つけたので手に取ってみることに。


区画整理のために立ち退き命令が出ていた2軒の家の片方で殺人事件が発生。
一家三人が惨殺された。
現場には犯人が着ていたと思われる衣服や指紋などの遺留品が多数。警察を早期解決を疑わなかった。

だが、肝心の指紋の主が全く掴めない。とても特徴的な指紋なのに該当者がいない。
近所の住民から任意の指紋提出を行うも、効果なし。
若葉公園内で起きた事件から、若葉事件としてなんの進展もないまま5年の月日がたった。

警察関係の有力者からも指紋提供を行ったとして、圧力がかかり捜査本部から追い出された幸本は、所轄署で生活安全課員となっていた。
そんなとき関わった事件の現場に、若葉事件の指紋が発見されたことを知り、独自で調査を開始する。
幸本は、若葉事件お蔵入りの原因は、警察上層部の捜査方針の誤りであるとし、証拠の握りつぶしをおそれたのだ。



そんなこんなで一人捜査を始めるんですが、継続捜査本部から目をつけられたりしてるため、なかなか捜査は進展しないんだよね。
実は若葉事件では凶器の種類も特定できていなかったりと、最初の早期解決のもくろみとはかけ離れた捜査状況。幸本さんが自分で捜査してみたくなる気持ちも分からんでもないけどね。

少しずつ継続捜査の積み重ねが生かされ、手がかりをつかんでいく感じはとっても面白いんだけど。
副題の一は幸本のことだとして、一〇〇ってなんのことなのかしら?

演劇で流すギター曲とか、そういうさりげない脅迫みたいのがいいな。

逃亡者
/文藝春秋
折原一


¥1,995
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★★★★☆


実際に起きた事件をモデルにした「~者」のシリーズ。今回は逃亡者です。
逃亡者と言えば、かなり古いけど、アメリカ人医師の妻殺しを題材にした映画があったよなー。


交換殺人のはずだった。
私は一人の男を殺した、だが気が動転していたんだろう。多くの証拠を現場に残してすぐに逮捕されてしまった。
そして不動産屋をしているDV夫は交換に殺されないまま、気がついたら病院のベッドだった。
捕まりたくない。
15年。。。逃げ切ってみせる…。

女は病院で監視に付いていた婦警を眠らせ、看護婦から服をはぎ取り逃走。
警察の張った網からすり抜けて、覚悟の逃亡生活へ。
15年は長くても逃げ切ってみせる。

各地で名を変え職を探し、周囲の目におびえながら過ごす日々。
警察の他にも名を汚されたとDV夫が私を追っている。



というわけで。
殺人を犯した女が逃亡を図り、警察とDV夫から逃げる15年を描いています。
途中、女を愛してくれる男に出会ったり、整形したり、警察とニアミスしたり。
ハラハラする展開には手に汗握るものがあります。

が、、、
言って良いのか悪いのか。
2/3を過ぎた辺りから雲行きが怪しくなってくるんだよね。よく分からない人物が複数登場してきたりして。
どう関わってくるのかしらと静観していたら、おいおい、とんでもないことしてくれちゃってるじゃないのさー!!

ラストはどうも、せっかくの前半の疾走感はなんだったのかと思わせる、尻すぼみ。
んー、ただ私が理解できてなかっただけなのか。
含みを持たせすぎて、色々分からんぞー!!