「そういえば、O先輩、介護のために仕事やめて郷里に戻るそうですよ」

 

O先輩は大学のときに私がちょっとだけ付き合ってた人。

就職で地方に行ってしまい、そのまま別れちゃったけど

最近になってそのときの仲間たちがときどき集まってるらしく

噂が耳に入ってきた。

 

「えっ。確かあと2年で退職だよねえ。なんであと2年待たないんだろう?会社やめっちゃったら

退職金も満額もらえないのでは?」

 

そう言ってから、ハッとした。

大学を卒業してからこの年まで、転職もせずずっと同じ会社で働いてきた。

退職まであと2年。

それなのに、会社を辞めて地元に戻るということは

ただたんに「介護」だけではないのでは?

もしかしたら説明するのがいやで「介護」と言ってるだけで

もう治る見込みのない病気なのかもしれないし

何か、そうせざる理由があるのかもしれない。

 

そんなに単純な話ではないはずだ。

 

大学を卒業して、もう30年以上の月日が流れた。

いつの間にか、みんな子供が成長して

自分たちが親になり、自分たちの親が亡くなる年になった。

 

私は

たまたま

親が元気で

父親なんてまだ仕事をしていて

だからほったらかしで

自分の好きなことができているけど

それは本当に

たまたま。

 

そして私だって

いつ、どう環境が変化するかなんて

誰にもわからない。

 

でも、今の平和でやりたいことがやれる環境が

ずっと続くわけではないということだけは

常に頭のすみに

置いておこうと

O先輩の話を聞いて思ったのでした。