雪が多いほど、増える雪捨て作業(除排雪)。そして雪が多いほど、けんかなどのトラブルも多くなる傾向があります。

そもそも日々の雪捨て作業で疲れてたり、作業に時間を奪われてイライラやあせりがあったりで、気持ちに余裕があるときには笑い飛ばせるようなことでも、トラブルの原因になりやすくなっているのかもしれません。

たとえば、隣の屋根からの落雪が、建物にかかったり、敷地に入ってきたり、というのは、実際に損害が発生していなくても気分を害するという人は多いです。日ごろからこのようなストレスを感じている状態では、何かのきっかけでトラブルに発達しやすくなっています。

そのほか、共用している場所の雪かきで、頻度や作業量的な不公平感からストレスを抱えるケースもあります。仕事の都合などで、早く利用する人が割りを食いやくなっています。

雪捨て場所に関わるトラブルも非常に多いです。

捨てる側は、捨て場所がなくて困りきって、やむなく捨てていることも多いのですが、自分の土地に捨てられたわけでもないのに、それに対して腹を立てる人も、実は多いです。

たとえば、家の出入り口前に残された道路からの雪を、捨てる場所がなく、道路脇の邪魔にならないところに動かしたことに腹を立てて文句を言ってきたというケースがあります。

「道路に捨てるな!」ともっともらしい発言ですが、道路からきた雪を、道路の邪魔にならない場所に動かしただけ。自分とは直接関係のないところまで、目を光らせて、怒りをぶつけてくる人もいるんですね。


立場は逆ですが、車を運転していて、道路に投げ捨てられた雪のために、通行しにくくなっていることを、そこに雪捨てしていた人に告げたら、逆ギレされて怒鳴られることも。


ところどころで、ピリピリしている空気のこともあります。

もちろん、雪が多くてもスムーズに雪捨てしている人たちもいますが、雪が多いほど、ストレスは増してくる傾向はあります。これはある意味、仕方がないことなのかな。
雪避せしているときに、ロードヒーティングできれいに融けている場所が目に入ると、そこに雪を捨てて融かすのがいい方法のように思います。

きれいに融けている舗装面が、どんどん雪を融かすイメージに繋がるのかもしれません。

でも、実際に雪を捨ててみると、目に見えて融けることはないです。融けるのは、ゆっくりゆっくりです。

融けるのに時間がかかるため、その間に、雪が降ってきたときには、その上にどんどん積っていくことになります。

残ってる雪がジャマで車が止められなくなったりなど、本来の目的が達成できなくなっては、ロードヒーティングの意味がないです。

ロードヒーティングは、路面が雪に覆われず露出している状態で、降った雪を次々に融かすのは得意ですが、いったん積った雪を融かすのは案外苦手です。

それは、ロードヒーティングの熱量の関係もありますが、雪は一旦積ってまとまると取扱いが難しくなる性質にも関係しています。たとえば、雪は砂のようにさらさら動いてくれないので、とけ残ったところがトンネル状になったりして、熱が伝わりにくい形状になったりします。一様に融けないで、融けたところと、融け残ったところで、まだら状態になることも多いです。ロードヒーティングは場所による部分的なON/OFFが通常できませんので、融け残ったところを融かす場合にも、融けて雪のないところにも熱は行きます。つまり、雪に触れることなく空気中に逃げるだけの無駄な光熱費がかかることになります。


そのため、ロードヒーティングで他所の雪を処理するのは、少しならまだしも、量が多い場合には適切とはいえません。かかったランニングコストの割りに合わないですし、当初の目的のための融雪が間に合わなくなる心配も増えます。ですので、そのような雪の処分は、ロードヒーティングではなく、別の雪捨て場を確保しましょう。

ただし地下水式の場合などで、それほどランニングコストがかからないのであれば、アリかもしれません。しかし、融けるまでに時間がかかることは理解しておかないと、雪を載せすぎて失敗につながることもあるでしょう。

ところで、雪を捨てる場所を融雪で作りたいという要望もあると思います。でもそのときはロードヒーティングではなく、融雪槽か融雪機がその手段になります。
屋根にしても、ロードヒーティングなどの地面にしても、融雪では、センサーを使った自動運転が導入されることが多いです。

降雪センサーや温度センサーによって、ON/OFFを制御するものです。

ところが、自動運転の制御がついているにも関わらず、自分でON/OFFを始める融雪利用者も多いです。

もし自動運転がついていれば、あえてシーズン中にスイッチを触る必要はないのですが、「ランニングコストが思ったより高かった」とか、「もっと節約できるはず」とか、「運転しだすのが早すぎてムダなような気がする」などの理由が手動運転の動機のようです。

それで、手動運転は成功しているのでしょうか?

もちろん、成功する場合と、失敗する場合があります。


成功する場合の一つに井戸水の散水消雪のケースがあります(もちろん散水消雪が全て手動運転で成功するとは限りません。)。 たとえば、消雪範囲に若干勾配をつけて、積った雪でも、流す&消雪により比較的速く雪をなくすることができるようになっていたり、散水ノズルが高い位置に設置され、積った雪を融かすのに適切な配置になっている場合などがあります。

また、熱量の大きいボイラータイプの場合も、積った後でも融雪が進むようなら、手動運転でも実用上問題なく使える場合もあります。

以上のような場合、スイッチのタイミングをうかがったり、手間はかかりますが、自動運転は手動運転できないときのサポートでいいのかもしれません。


でも実際は、手動運転で失敗する場合が多いです。

一般的に融雪は、降った直後の雪を融かすのには向いてますが、積った雪を融かすのは苦手で、時間がかかる場合が多いです。その間も、どんどん雪が降ってくれば、融雪が間に合わず、雪が増えていくことになります。

結局、融雪が間に合わず、除雪が必要になるようでは、ランニングコストをかけて融雪している意味がありません。

散水消雪の場合でも、スタートのタイミングが遅れたために、積った雪の中に水の通り道ができて、そこに水が集まり、雪に触れることなくただ流れるだけで、融かしたい雪はいつまでも島のようにその場に残っているという光景をよく目にします。

融雪業者への「雪が融けない!」というクレームには、お客さんが自らの判断で行った手動運転で、運転のタイミングが遅れたことに原因があったりします。しかしそのことを、お客さんに言うのは業者にとっても辛いことです。なぜなら、融けないことで機嫌が悪くなっているお客さんに、「お客様の運転ミスです」とは言いにくいですから。伝えたところで、業者もお客さんもお互いに気まずい思いをするだけのことも。

手動運転をする場合には、運転に失敗したときのリスクも理解していないと、いたずらに嫌な思いをすることになります。

業者としては、できれば自動運転に任せてもらいたいのが本音のようですが、そのように自動運転で満足して手動運転をしないお客様は案外少数派なのかもしれません。