SNSが荒れている。

ファンからの怨嗟の声があがっている。

理由はわかってるんだ。

あなたの画像だけじゃなくて、僕と一緒の画像さえ載せないから。

僕の心がまだあなたに囚われているから、

ダミは怒って画像を載せない。

いい加減にしろと言いたいけど、僕は言葉を飲み込んで、

毎晩ビールをあおって寝てしまう。

ダミを抱かなくてすむように。

 

あなたの隣に立つのが辛かった。

どんなに練習しても追いつけない。

僕のちっぽけなプライドはズタズタだった。

どんなにディスっても、あなたは笑って許してくれた。

僕はあなたの愛情を図るためにディスり続けていたんだ。

 

いつからこうなってしまったんだろう。

ダミが現れてからかな。

僕ができるまで辛抱強く待ってくれることもなくなったし、

今までのように引き立ててくれることもなくなった。

見えない壁が立ちはだかって、あなたの気持ちがわからなくなった。

 

あなたの隣に立ち続けていればよかったのかな。

毎晩辛くて、吐きダコができるまで吐いても、居続ければよかったのかな。

それとも二人が残されたときに留学すればよかったのかな。

わかってるんだ。

僕にはこの仕事は向いてないって。

普通の暮らしをすればよかったんだって。

 

あなたとの日々は、誰も見られないような夢だったんだって。

これからは、過去の栄光を思い出しながら、普通の暮らしをすればいいんだって。

そう思っていたのに、胸が痛いよ。

僕はどうすればよかったのかな。

また今夜もビールをあおって、シャワーも浴びず寝てしまおう。

ダミを抱かなくてすむように。

 

あの人の嫌疑が晴れた。

真っ白なインスタは潔白の証。

誹謗中傷の嵐の中、あの人は微塵もブレなかった。

ああ、だから、あなたは僕を夢中にさせるんだ。

早くあなたに会いたいよ。

あの人の過去動画じゃない姿がネットにあがるようになった。名誉回復のほうが先だろうって僕も思うけど、半年前に撮ったものでも、それでも嬉しい!!!

 

たいせつなことはね、目に見えないんだよ……

 

キツネが言っていたように、僕が心を開けば、僕たちはお互いに必要になる?でも、僕はあなたにとって、世界でただ一つの存在じゃなくていいんだ。あなたはみんなのものだから。あなたは僕にとって、世界でただ一つの存在でいいんだ。

「私がお前を手放したのは、今のお前の年だった」

 

まどろみの中であなたの声が聞こえたような気がした。

 

「彼を手放した今のお前なら、私の気持ちがわかるだろう」

 

俺の髪を優しく梳く手。

え?今、何て?

 

「起こしてしまったかな」

 

優しく微笑む顔。

ああ、昔と同じだ。

 

「あいつのことは本気だった・・・」

「私が本気でなかったとでも?」

「だって、年が離れすぎていたし、俺はただの居候だったし・・・」

「年の差がある恋人は珍しいことではないよ。居候だから、体を差し出さなければいけないとでも思っていたの?私は愛する人しか抱かないよ」

 

確かに俺は大事にされていた。その目で、その手で、優しく慈しんでくれた。でも、それが愛だとはわからなかった。

 

「合宿所に入ったとき、俺はあなたに捨てられたと思った」

「捨てたんじゃない、手放したんだ。いつまでも縛り付けておくことはできないだろう」

 

なぜ、あの時、言ってくれなかったのか。ああそうか、言ってしまえば、俺を縛り付けることになったんだ。今ならわかる。いや、あいつを手放した今じゃなければわからなかった。

 

「まだ夜明け前だ。もうひと眠りしなさい」

 

あなたは俺を優しく抱き寄せ、額にキスをした。

 

「これからはまた忙しくなる。だから今のうちにゆっくりおやすみ」

 

まどろみの中であなたの声が聞こえたような気がした。少年の俺と、今よりもずっと若いあなたとの思い出が、走馬灯のように駆け巡っていった。

私の家でソロコンの相談をするという思いも寄らぬ展開になったが、これはこれでよかったのかもしれない。

 

昔と変わらぬ長い指に手を添える。この長く美しい指が好きだった。指だけではなく、奥二重の黒目がちな目も、美しい鼻筋も、赤い唇も、完璧すぎる横顔も。シャツのボタンを外し、白く柔らかい肌に隠れた腹筋をなぞっていく。天使のような歌声とダンスの才能も。正義感溢れる性格とステージに懸ける情熱も。負けん気が強いくせに、傷つきやすいナイーブな心も。何もかもが私を魅了してやまなかった。

 

私がお前を手放したのは、今のお前の年だった。いつまでも私の手元に置いておくわけにはいかなかった。ステージの上で圧倒的なオーラを放つ舞台王は、ステージに返さなければならない。そう思っていたのだよ。

 

でも、疲れたときは、いつでも羽を休めに戻って来るがいい。私はいつだってお前のサポートをする。舞台王としてのお前も、ひとりの男としてのお前も、今も変わらず愛しているから。