部屋に戻ってきたユーゴが開口一番

「種夫、何したんだよ!」

そう叫んだ。

タークネシャルはきょとんとしていた。


「何がだ?」

分かってはいるが、ユーゴの口からどんな説明が出るのか確かめたかった。


「俺も分からないけど、何かしたからこんなことになってるんだろ!」

説明が説明になっていなかった。


「どれだ?」

なのでタークネシャルも反応に困った。理路整然と説明して欲しかった。


「それなら時計、スマホ、あとテレビか?」

最後のテレビに関しては自信なさげに自分に疑問を投げ掛けている。


「時計はお前が熟睡しているノンレム睡眠中に電池を外して針を5時くらいにした。

スマホはアラーム解除しておいた。テレビは、今日の8時48分に流れる映像を流した。」


「ん??」

ユーゴの疑問は分かる。だから説明しよう。

「未来の電波ジャックした。」
「俺への嫌がらせの為にしては壮大な仕掛けだな。」

そう言うとユーゴは少しの間物思いに更けだした。

タークネシャルは理由の分からない何となく嫌な気持ちに襲われた。


「まぁあの程度の術も見破れないとは、情けないな。」

椅子に腰かけるタークネシャル。その様子をじっと見つめるユーゴ。


「動揺していたから見破れなかっただけだ。」
「冷静さを欠いていた時点で終わりさ。そんな事では生き延びれないぞ。」
「どの世界の話をしているんだ。この世界にそんな資質は要らないだろ。」

頭を垂れるユーゴ。

(どの世界、か。)

寂しげに切ない表情をするタークネシャル。

そんなタークネシャルの姿がユーゴには見えていなかった。

見えなくて良かったのかもしれない。

何も思い出せていないユーゴに罪は無いのだから。


はぁぁ。と、ため息をつくユーゴがポツリと呟いた


「ネコか。」

ため息をついた先は、パッと見、カーペットと一体化した猫。



そのまま撫で、


そのまま寝てしまった。



次に起きた時のユーゴの慌てっぷりは更に凄かった。

「まだ思い出されても困るからしばらくはこのままでいいか。」

「あれじゃあこっちに帰って来てもすぐ倒されちゃうね。」


数時間前に見た光景と酷似した現在を見つめながら二人は苦笑いしていた。