恥ずかしくて窓側にそっぽを向くと、大野さんは機体の壁に設けられた窓のシェードに手を伸ばして、俺に上げるように促した。
「見てみ?星とかは、綺麗に見えるかも」
シェードをあげて、少しできた隙間から窓を覗いた。雲ばかりでなにも見えない。
けれど、見上げると、雲の切れ間から、一瞬だけ星が見えた。
「リーダー、星」
「ふふ…おいらの位置だと見えねぇから」
大野さんは座席から身を乗り出すと、俺の体に被さるようにしながら、顔を窓に近づけた。
腕や胸に感じる大野さんの体温と、甘い香りにどきんとする。
見づらいし、
手、離せばいいのに…
ぎゅっと握られた手は、座席の肘掛けに置かれたままだった。
星を見つけようと、つないでいない手で奥の肘掛けを掴んで、シェードの隙間から上を見上げる大野さんの横顔をじっと見る。
ガクン
また、一瞬急降下する感覚に襲われて、俺は思わず自由な手で俺の上にいた大野さんの肩を抱いた。つないだ手をぎゅっと握る。
「ふふ…すごい揺れんね」
「大丈夫?席…ちゃんと座って」
俺は、俺の胸の上で、俺の腕にしがみついた大野さんに言った。大野さんの綺麗な瞳がまっすぐこっちを見ている。
どうしよう…
このドキドキいってるやつ、
飛行機のせいだけじゃないかもしんない…
「にの、絶対落ちたりとかしないから大丈夫だよ」
大野さんは俺の隣の席にもう一度深く座り直しながら言った。
「わかってるよ、そんなこと」
「嵐が乗ってるからね。乱気流なんかに、負けない」
大野さんは、んふふっと満足そうに笑って、つないだ手はそのままに、目を閉じた。
バカ
バカ
何、うまいこと言ったみたいに言って…
言葉にできない気持ちが頭の中を駆け巡って俺は唇をかんだ。
こういうとき、
手を離さないでいてくれる
あなたが、俺の特別なんだって
思い知っちゃうじゃん…
「あ、にの…シェード下げとかなきゃ」
大野さんは思い出したように目を開けて俺を見た。
「乱気流を抜けたら、朝んなるから、絶対まぶしい」
大野さんはそれだけ言うと、再びぱたっと座席にもたれかかって目を閉じた。
…そうだ。
シェードはさげておかなきゃ。
乱気流を抜けたら、
きっと、まぶしい朝日。
つないだ手がみんなにばれたら、
困るもんね…
俺はシェードを下ろして、大野さんとつないだままの手に、毛布の端っこをかけて、目を閉じた。
あなたが、俺の特別なんだって
思い知っちゃうじゃん…
「あ、にの…シェード下げとかなきゃ」
大野さんは思い出したように目を開けて俺を見た。
「乱気流を抜けたら、朝んなるから、絶対まぶしい」
大野さんはそれだけ言うと、再びぱたっと座席にもたれかかって目を閉じた。
…そうだ。
シェードはさげておかなきゃ。
乱気流を抜けたら、
きっと、まぶしい朝日。
つないだ手がみんなにばれたら、
困るもんね…
俺はシェードを下ろして、大野さんとつないだままの手に、毛布の端っこをかけて、目を閉じた。
-終-