2002年7月 健太君 高校1年生の頃

由紀菜にノートを見せてもらっていた。
一日、ぼーっとしていたためか全くノートが取れていなかった。
由紀菜の彼氏である大悟と俺の彼女の藍佳はそれぞれ用があり帰ってしまった。

あまり、由紀菜と二人きりになることがないせいか、
なんとなく緊張する感じはあったが、
そんな俺とは反対に隣で音楽を聴きながら由紀菜は勉強をしていた。

だが、そう思っていると急に由紀菜は俺の髪の毛をワシャワシャとつかんできた。
そして、後ろから抱きついてきた。

『なんだよー。気持ちわりーな。』
『まあまあ、そんな事いって、照れてんじゃねーよ(笑)』
『うるせー。誰もいねえ教室でこんなことしてたらおかしいだろうが!!(笑)』
『それに、モロにお前のオッパイが当たってるわ。』
『大悟に怒られちまう。』 『そんな気持ち悪がるなよ!』
『そうじゃねえだろ!!!(笑)』

『まあ、私たちは仲良しだからな!無駄な緊張はやめたまえ。健太君!』
『な…。ばれてやがる!』

『つーか、二人きりになることなんかねーじゃんか。いつも4人だし。』
『確かにねー。』 『お前、緊張しないのか?』
『うーん、、、』 『極度の人見知りとか言ってたじゃん。』
『健太君にはしないかな。どっちかというと、大悟の方がまだ緊張するかも!』
『なんでだよ、おかしだろ。』
『そだね!(笑)』 『でも、緊張しないんだもん!わかんない☆』
『あっそ…。変な奴だな。』 『それが、お前の友達だ!(笑)』
『ほんと、変わったやつ。』


俺はノートを取っている間も、ずっと考えていた。
俺にとって今必要なものは何なのか。
以前の由紀菜の仲間たちは、どうして由紀菜という人間をこんなにも崇拝し、
全力で守り抜くことができるんだろうと。

ぼーっとしていると、由紀菜がまた話かけてきた。

『ねぇねぇ、見て。』 『ん?』
『このリュック、かわいいでしょ。』
『おう、さっきもその話したじゃん。』
『うん、そうなんだけどね。これ、思い出がつまってるって言ったじゃん?』
『うん。』

『聞きたい?』
『なんだよ、んな唐突に。』
『つか、聞かせろ。興味ある。』


は、このリュックを実は知っていた。
小5の時に由紀菜が泣きながら抱えていたリュックだった。
大事な友達が遠くにいく前に、由紀菜にプレゼントしたものだろう。
だが、以前のリュックとは少し違い、リュックにはいくつもの缶バッチがついていた。

『私が、小学校の頃にね、ある友達からもらったリュックなんだ。』
『遠くに行っちまったって奴か?』 『そうそう。』
『離れて行っても、私がさびしくないようにって。』 『なるほど。』
『自分だってさびしかったはずなのにね。』
『でも、その子は私の事をずっと思ってくれてたんだよね。』
『なんで、そんなに強いんだろうって。そう思った。』


『思い出しちゃうと…。泣いちゃうんだ、私。』
『だから、深くは聞かないでね!(笑)』
 『うんうん。』

『その子が離れて行っちゃった後も、そのリュックをかかえながらずっと泣いてた。』
『会いたいよ、寂しいよって。』


『そしたらね、仲間が声掛けてくれたんだ。』
『仲間?』 『ほら、最強メンバーだよ!中学の時の。』
『あぁ、桐山とか、斉藤とかか?』
『ん?なんで、斉藤くんの名前知ってるの?』

『あ、いや、ほら。大悟が言ってたじゃんか。』
『由紀菜の当時のボーイフレンドがなんちゃらって。』
『あぁ、そうだったね。』

『それでね、そん時に言われたの。』
『寂しいのは、お前だけじゃないって。』

『じゃあ、そいつも以前は最強メンバーの一人だったのか。』
『そうそう。』 『へえ。そんで??』

『うん。寂しいのはお前だけじゃないし、仲間はその子だけじゃないって!』
『私、ハッとした。リーダー失格だって。』
『そんでさ、当時はヘボかったの!(笑)』
『そっから、私たち覚醒してね、「最強」って言われるようになったんだ。』

『へえ、じゃあ。そのリュックはお前らが最強になる過程を見てきてるわけだ。』
『そうなの。』

『だから、健太君。』 『ん?』
『このリュック、傷つけないでくれてありがとう。』 『は??』
『ありがとうってなんだよ。』
『いじめた俺にありがとうなんて言うなよ。』 『うん。でも、そう思ったんだもん。』
『まぁ…。そか。』

『あ、ねね。ここに缶バッチが7個あるでしょ!!』
『お、確かに。』 『これ、何か意味があるのか?』
『うん。』

『それぞれ、7人の意志が刻まれてるの。』 『ああ、それで言葉が書いてあるのか!』


青い缶バッチ :斉藤一真 《信念》
ピンク缶バッチ:大島由紀菜《最強》
水色缶バッチ :桐山裕貴 《平和》
黄色缶バッチ :堂川貴志 《心友》
緑の缶バッチ :澤祐樹  《突破》
赤の缶バッチ :松本聖也 《誠実》
空色缶バッチ :木村ゆかり《愛情》

『あ、由紀菜の《最強》って…。それで最強メンバーって言われたのか??』
『ご名答!!!すばらしい♪』
『つーか、小学生のくせにすげーな!!お前ら。』
『まあ、私たちだけで考えたわけじゃないんだ。』
『大好きな先生がそう教えてくれた。』

『そかそか。お前の小学校時代。すごくステキだよ。』

『うん。』 『本当にそう思ってくれる?』
『他にも色んな話がお前にはあるんだろうけど、お前の仲間マジですごい。』
『お前がリーダーだからなんだろうな。』
『そして、俺も今はお前の友達だから、きっと 』


すると、何かがピンと来た。

あれ…。なんだろ…。
一瞬、わかるような気がした…。
俺が探してた答え…。



『ん?どうしたの?話が急に止まっちゃったよ?(笑)』
『あ、いや。ごめん。』
『ちょっと、ふと考えちまった。』 『健太君、悩んでるね。』
『わかるか?』 『うん、何かに悩んでる。』

『朝、健太君が私に言ってくれたじゃん。』
『由紀菜、大丈夫だよって。』
 『お前…。その言葉、流してなかったのかよ。』
『すごく意味深に感じた。』 『大悟たちは意味わかんないって言ってたけど。』
『健太君、私にはわかるよ。』
 『由紀菜…。』

『でもね、急がなくていいの。』
『何で悩んでるかはわからない。』
『でも、健太君が健太君自身の何かを見つけるまで。』
『私はずっとそばにいるから。』

『俺がその答えをみつけたら、お前…どこか行っちゃうのか?』

『ううん。いかないよ。』
『でも、私は新しい健太君と一緒に進んでいこうと思う。』
『それまでは、古い健太君と一緒にいようと思う。』


『ありがとな。』 『うん。』

『つか、リュックの事。大悟たちは知ってるのか?』
『ううん、話してない。まあ、聞かれてないし♪(笑)』
『そうなのか!俺が第一号か!!』
『まあね。』 『でも、話さないかな、大悟たちには。』
『いつかは言うのかもしれないけど。』

『なんで??』

『大悟は確かに彼氏だし、藍佳ちゃんも大親友だけど・・・』
『近い仲でもなんでも話していいってわけではないと思うんだ。』
『それに、私の膨大な過去を話したら、それで私の魅力は終わっちゃうよ(笑)』

『んな事ねえよ…。』

『いいの。健太君だけが知っていてくれれば。』
『健太君だけに知っていて欲しいってそう思ったんだ。何でかはわからないけど。』
『でも、私にとって健太君は特別な人だもん。』
『きっと、私の第6感がそうしてるんだと思う。』
 『うん。』


すると、またピンと何かに襲われるような感覚に陥った。

あぁ、まただ…。
なんだよ、一瞬わかる感じがしたんだよ。くそ…。



『だから、死なないでね。』
『当たり前だ。』

『よかった、じゃあ一緒に帰ろ♪』


俺にとっての自分探しはまだ続きそうだった。
でも、確実に由紀菜はその答えをしっている。
当然、由紀菜を慕う最強メンバー全員も。

                               つづく