私は昔からエッセイマンガが好き。注文住宅を建てるなんて考えもしなかった20代の頃から、伊藤理佐さんの『やっちまったよ一戸建て!!』や内田春菊さんの『ほんとに建つのかな』を楽しく読んでいた。
マンガの中では地鎮祭のことも面白おかしく描かれており「いつか家を建てるとしたら、私もこんなふうに地鎮祭をやるのかな。ちょっと恥ずかしいけど、面白そうだな」なんて思っていた。
ところが、以前県民共済住宅で家を建てたことがある相方に聞いてみたら「地鎮祭なんてやらないよー」とあっさり言われてしまった。
「えっ、土地の神様を鎮めなくていいの?」
私は驚いた。
相方はスピリチュアル好きというわけではないが、神社は好きでよくお参りをしている。伊勢神宮にも好んで行くし、毎年神田明神で熊手を買っているような男だ。そんな彼が「やらない」と言うのが意外だった。
調べてみると、確かに県民共済では地鎮祭は行わない。もしやりたければ、自分たちで神主さんを呼んで手配するスタイルなのだ。
「最近は地鎮祭自体をやらない人も多いんだ……」
そうは言っても、土地の神様を鎮めなくて本当に良いのだろうか。風水の面でも、今の間取りは決して完璧とは言えない。そう思うと、どうしても地鎮祭のことが気にかかってしまう。
地鎮祭、やるべきか、やらざるべきか……
そんなことを考えているときに、ちょうど昔の仕事仲間と久々に会う機会があった。
私を含めて4人の集まりだったのだが、なんとそのうち2人が「霊感体質」である。
私は幸か不幸か(幸いにもと言うべきだろうが)霊感体質ではないので、日頃あまり「霊」の存在を意識することはない。
だけど、霊感がある彼らはしょっちゅう不思議な体験をしているらしい。その日も「誰ももいないはずの部屋から声が聞こえた」「道に迷って何度進んでも同じ場所に出た」等の話を聞かせてもらった。
ちなみに彼らは住むところにも敏感で「部屋を借りるときには、絶対に事故物件かどうか調べる」とのこと。
地鎮祭のことを相談したら
「えー! 地鎮祭をやらないなんてことがあるの?」
と驚かれてしまった。
さて。
怖い話の本当に怖い……というか嫌なところは、聞いている最中は面白くて「それでそれで?」とどんどん盛り上がってしまうことだ。そして彼らと別れてから、本格的な恐怖がやってくる。
「なんであんな話を私にしたんだ!」と彼らを憎く思ってしまうほど怖くなる。その日もまんまとその状態に陥った。
すっかり震え上がった私は「土地の神様を鎮めないで祟りがあったら大変! 絶対に地鎮祭をやる」と心に決めた。
相方にも「私がお金を出すから地鎮祭は絶対にしよう。あなたは当日参加するだけでいい、面倒な準備は全部私がやるから!」と宣言したほどだ。
しかし、怖い話の「そんなに怖くないところ?」は、時間が経つとどんどんその恐怖が薄れてしまうことだ。
あんなに怯えていたのに、一週間、二週間と過ぎ、一ヶ月が経つ頃にはだんだん面倒くさくなってきた。
……だってお金も時間もかかるしね。
それでも「やっぱりやったほうがいいのかな」と迷いに迷っていた私に、決断のきっかけが訪れた。
それは「建売住宅は地鎮祭をしない」という事実に気づいたこと。
うちの近所は分譲の建売住宅が結構多い。どんどん新しい家が建っているけれど、地鎮祭らしき準備をしているのは見たことがない。「そうか!」と私は目から鱗が落ちた。分譲住宅を作るときに、いちいち地鎮祭なんてやっていられないのだろう。
建売住宅で地鎮祭はしない。けれど、それで災いが降りかかったという話は聞いたことがないし、みんな平和に楽しそうに暮らしている(たぶん)。もちろん家庭の悩みはそれぞれあるだろうが、それは地鎮祭の有無とは関係ない気がする。
というわけで、地鎮祭はやらないことに決めた。
お金も時間も節約できて、この決断は良かったと思っている。
まあ、やったらやったで「気恥ずかしくて面白い体験」として、良い思い出にはなっただろうけどね。












