「なのはな」以来のライフ公演です。
そして本拠地中野のウエストエンドはいったい何年ぶりだろう?
隣にピザ屋さんができていたのも(できていたのは知っていたけど)初めて見た(笑)。

今回は「The Other Life」シリーズ10本目。
「海外の小劇場で生まれた傑作を大人のテイストで繰り広げる」シリーズで前回のブラリレも面白かったけれど、
今回も面白い戯曲を選んだものだと感じました。

登場人物はジョアン・キャシー・メアリーの3人だけ。
休憩なし三場構成で、ハイスクール時代・大学生時代・大学卒業6年後のそれぞれの成長と成長しなかったところを描いていました。
もちろんこの劇団は男優しかいないので女3人芝居を男性で演じます。
男性だから俯瞰した視点で女性を見られるからか、わかりやすいドロドロさはなかったので見やすいと同時に考えさせられる部分も多かったように感じました。

ハイスクールからつきあってそのまま結婚して子供もたくさん幸せな筈なジョアン、いつもリーダー格で真ん中に立ってキラキラしていたのが恋人に手ひどく振られ夢だった教師の仕事にも絶望して今は何もしていないというキャシー、
ずっと親から離れて自由になりたくて卒業後は海外を渡り歩き今ではポルノ画廊で生計を立てているメアリーと三者三様。
そんなジョアンを関戸さん、キャシーを曽世さん、メアリーを芳樹さんという組み合わせは非常にぴったりで合っていました。

楽前と千秋楽の2回観劇いたしましたが、初見の時とストーリーがわかって観るのとはこれほど印象が変わるものかという驚きがありました。
話が違って見えた。
ジョアンはあまり印象変わらないけれど、キャシーとメアリーは二度目で印象が変わって見えるのは台詞にあまり本心を出していなくて表情で演じているので注目して見ないと見落とすからか。
1人が話している時(主にジョアン)、2人は黙って聞いているけど目で会話をしているのですよね。
「VANITIES」というタイトル通り3人が「虚栄心」を抱えながらの芝居でありましたが、もう一つの意味「むなしさ」というのも感じる芝居でもありました。
ただの「女は怖い」という話ではない。
ハイスクール時代は1963年で今よりも「女とはこうあるべし」というのが大きかったというのもあって狭い世界しか見えていなかったのも学生だからというのもあるけれど、女だからというのもあったのかな。
それにいちばん先に気づいたのはメアリーだと思うのですが、意外に奥底でいちばん先に気づいていたのはジョアンだったのではないのかとも思うのです。
見えていてもあえて見えていないふりをしていたのではないのかという意味で。
おそらくいちばん夢を見ていたのはキャシーではないのかな。

三場はハイスクールを卒業してから10年後の話なので実はまだまだ若い。
これが更に10年経ったらまた新しいいい関係になっているんじゃないかという希望を最後に感じたのは倉田さんの演出だからか。
これだけ拗れてもキャシーやメアリーがジョアンへ対する友情は学生時代よりもあるんじゃないかと感じました。

一場と二場、二場と三場の間で着替えをするのは舞台上で。
段々衣装を替えメイクを直してそれぞれ大人になっていく様が見えるのは面白いけど演者にとっては大変かな(笑)。
意外に(笑)、芳樹さんが無駄のない動きで着替えて整えていく様が美しく、曽世さんは関戸さんにファスナー下すのを手伝ってもらっていた。
それぞれの衣装も三者三様で似合っていて美しかったです。
イメージカラーはジョアンが黄色、キャシーが青、メアリーが赤だったのかな。
一場のそれぞれの髪飾りからそうだったので。
正直、最初のチアガール姿は色んな意味できつかったけれど(近いので特にw)、だんだん見慣れて可愛く思えてきたのがさすが役者。

とにかくずーっと3人喋りっぱなし、丁々発止のやりとりがさすがでした。
パンフレットで関戸さんがジョアン以外は演劇的焦点の当てどころがあるがジョアンにはないので技術が必要と言っていた通り、実はジョアンがいちばん難しい役ではないのかなと思います。
そこにいちばん後輩である関戸さんを置いたというのがいいバランスだったように思います。
阿吽の呼吸でできるところが劇団の強みだなとも思った。

ところで、楽ではハプニングがありまして関戸ジョアンがシャンパンの瓶をクーラーごと落としてなんとかアドリブで乗り切っていましたが、挨拶では先輩たちにさんざんいじられ「帰っていいですか?」と嘆いていたw
それまでは大きなハプニングがなかったのになぜ楽で?とも言われていた(主に曽世さんにw)。
舞台挨拶は楽だけの筈だったのに前楽でも結構しゃべっていたなあ、おしゃべりおじさんw

濃密な時間を過ごすことができて幸せだったというのが3人共通の挨拶だったように思います。
カテコは何度も、トリプルコール後にはなぜかあいうえお作文を無茶ぶりする曽世さん。
実際には出てこないがいちばん重要な人物「テッド」から、「テ」が言い出しっぺそぜさん、「ツ」がせっきー、「ド」が芳樹さん。
オチをまかされた芳樹さん、「どんだけー!」とIKKOさんで締めていたw
さすがです、芳樹さんwww