「はみだしっ子」以来久々のライフ本公演を観ました。

震災後の福島に住む小学6年生のナホが主人公。
津波で祖母は行方不明、そして原発の近くに住んでいたので両親・祖父・兄と共に避難先へ移り住んでいる。
そんな時に夢の中で祖母と再会するが、祖母の元へ案内してくれたのは西洋人の女の子だった・・・
というストーリー。

この話を震災直後に描いた萩尾望都さんがすごい。
テーマが重いというのもあるが、実は話そのものは大きく動いていないので舞台化するには非常に難しい作品だと思う。
萩尾さんがこの作品をこの劇団に託したのは今まで培ったすごく大きな信頼関係があるからこそで期待に応えた舞台だったと思う。

上演時間は今までにない程短い1時間。ただ、1時間とは思えないほどの濃さであった。

誰一人悪い人間が出てこないのが印象的であり、だからこそ理不尽さを強く感じました。
今までの家族の幸せがあの一瞬で崩れてしまった悲しみ。
思ったより声高に原発反対を謳っているわけではなかったのですが、ある一家族(阿部家)の人達を丁寧に描くことによって色んな感情を揺さぶるものがありました。
ただそれでも家族みんなで前を向いて歩いて行こうという希望を感じさせるのは原作もだけど、倉田さんの演出だなと感じます。

いちばん心を動かされたのはおばあちゃんが写っているアルバムをおばあちゃんの友人の藤川さんが持ってきてくれて、彼女が帰った後お母さんが泣くシーン。
常に家族に対して朗らかに接していたが、大人だっていや大人だからこそ堪えていた。
それをナホちゃんが「お母さんも悲しかったの?」「お母さんも我慢していたの?」と自分だけが悲しいわけではないと気づく、彼女の心の成長を感じるシーン。
このお母さん役の仲原さんが本当に泣けた。
観る度に巧くなっていると感じます。

ナホちゃんは関戸さんも松本さんもどちらも良かったけど、チェルノブイリの女の子との組み合わせとしては同期同士の関戸ナホ、松本女の子のペアが良かったです。
一言も台詞のないチェルノブイリの女の子の説得力はやはり松本さんの方が長けてる。
ラストの「あなたはチェルノブイリにいるあたし、あたしはフクシマにいるあなた」というナホちゃんの台詞が響きました。

原作に登場している歌手の音寿さんのモデルである明石さんを客演に迎えて、そして原作の曲をそのまま使わせてもらえるのがこの劇団だからこそ。

 

スクリーン一面の菜の花が美しかったです。

ソワレではマチネより少し後ろの席だったのでその時初めて気づいたのですが床も黄色に染まっていたのですね。

「ALARA」についてや、なぜ「なのはな」だったのか、チェルノブイリについてなど原作より情報を多くしているためどうしても説明口調になってしまうのが惜しいところ。
しかし、全員が一丸となって真摯にこの作品に取り組んでいるのが伝わってくる舞台だったと思います。
現在進行形の話であるため、カテコの挨拶で皆が言っている通りここがスタートライン。

千穐楽のため、(マチネは初日でもあり千穐楽)役者挨拶があり、さすがにこのテーマなのでみんな概ね真面目な挨拶だったのですが、
船戸さんが「顔面工事を頑張った関戸」と言って笑わせたくらいか(笑)。
その後のてつさんが「この後しゃべりにくいわ」とつっこみ、最後の藤原さんが「みんな成長して嬉しい、船戸を除いて」とつっこんでいた。
ちょっと笑いがあってもいいと思うけれど後で怒られてそう・・・。

色々大変そうですが、年1回でも地元で公演が観られると嬉しいです。
末永くお待ちくださいと藤原さんがおっしゃってたので待つよ(笑)。