軽井沢演劇部の「ある死刑囚の手紙」観てきました。
前回は予定が合わなくて観られなかったのですが、ずっと気になっていた作品なので観られて良かったです。
場所は成城学園前にある「第Q藝術」というギャラリー。
朗読ながらも牢獄をイメージしたセットや照明が印象的でした。
「死刑囚」とはバー・メッカ殺人事件を引き起こし、後に刑を執行された正田昭。
刑を執行されたのも私が生まれる前の話で今まで全く知らなかったので事件の概要はWikipediaで調べました。
2部構成となっており前半は彼と交流があった作家であり精神科医の加賀乙彦先生との書簡のやりとりを芳樹さん1人の朗読で、後半は大さんと岳大さんが交互に正田を演じ、矢代さんが正田と文通をしていた女性教師を演じての書簡のやりとりを3人での朗読。
初演は後半部分のみだったのですが、初演では参加できなかった芳樹さんが参加することにより前半を付け加えた形だそう。
とにかく前半は芳樹さん1人でずーっとしゃべっているのであとの3人はいつ出てくるんだろうと思った(笑)。
時計を見ていないので正確な時間はわからないのですが30分以上は話していた筈。
芳樹さんが加賀先生に対する正田を(芳樹さんは加賀先生パートもあったが)、大さんと岳大さんが女性教師に対する正田を演じることによって人間はいろんな面を持っているということを三人三様で表現されていました。
もちろん犯した罪は罪だが、常に死と向き合っている精神状態とはどういうものだろうかと考えさせられる。
意外にも普通に暮らしているがそれでもやはり普通とは異なる生活。
もっと重いかと思ったが思ったより重くなく、楽しげなところもあるためそれが逆に重さを感じました。
最期を知っているだけにこういった普通に生活を楽しむ日々の終わりが訪れるのがわかっているだけに最後にずしんとくる。
死刑制度の是非を問うものではないだけに逆に色々響く作品でありました。
アフタートークはこの作品について、そしてこの作品をはじめたきっかけなど。
特別ゲストというか飛び入りゲストは大杉漣さんの遺作でもある「教誨師」の佐向監督。
同じく死刑囚との対話を描いた作品で共通するものを感じて矢代部長が招待したとのこと。
翌日のゲストが加賀先生であるのは知っていましたが意外なゲストでした。
その中での話で印象的なのは「教誨師」は舞台的な作品だけどやはり映像でしかできないものであり、今回の作品は映像的なところもあるが舞台でしかできないという指摘。
そして芳樹さんが語っていたのが、「教誨師」は創作なのに6人の死刑囚の人間像がリアルであるのに対して、この作品は実際の書簡のやりとりであるのにフィクションにも思えるという点。
現実は想像を超えるというのとはまた語弊があるのかもしれないけれども不思議だなと感じました。
そしてこの女性教師の方はまだご存命なのですね。翌日にこの作品を観るために上京されるとのことでした。